2022.05.29

役員全員がWEB会議参加の場合の取締役会招集通知・議事録の書き方

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取締役会の運営実務を行っている方にとっては、ご存知のことでしょうが、取締役会は実際にその開催している場所に赴かずとも、WEB会議、テレビ会議、電話会議、といった形式での参加が認められています。
しかし、実際にWEB会議などの方法を用いて運営実務を行った例は少ないのではないでしょうか。
今回は、役員全員がWEB会議参加の場合の取締役会招集通知・議事録の書き方について解説していきます。

ポイントは、下記の4点です。

  • 開催場所
  • 出席取締役の参加場所
  • 開催方法(WEB会議など)
  • 終始、双方向の意思伝達に問題が無かった旨の記載


一般的な取締役会の場合


まず、一般的な取締役会の場合の招集通知、議事録の記載例をとりあえず提示します。
こちらは、ごくごく一般的な形式ですので、違和感の無い内容かと思いますので、理解されている方は飛ばしていただいて問題ございません。
 

取締役会招集通知の記載例


令和〇〇年〇〇月〇〇日

取締役各位
監査役各位

株式会社〇〇〇〇

代表取締役〇〇〇〇


取締役会招集ご通知


拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、当社取締役会を下記のとおり開催いたしますので、ご出席くださいますようお願い申し上げます。

敬具



1.日時 令和〇〇年〇〇月〇〇日
2.場所 当会社本店〇〇会議室
3.目的事項
  報告事項 〇〇〇〇の件
  決議事項 第1号議案 〇〇〇〇の件
       第2号議案 〇〇〇〇の件

以上


取締役会議事録の記載例


取締役会議事録


開催日時 令和〇〇年〇〇月〇〇日〇〇時〇〇分
開催場所 当会社本店〇〇会議室
出席者 代表取締役 〇〇〇〇(議長)
取締役 〇〇〇〇
    〇〇〇〇
    〇〇〇〇
監査役 〇〇〇〇
    〇〇〇〇
    〇〇〇〇

議事の経過の要領及びその結果

報告事項
〇〇〇〇の件
 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

決議事項
第1号議案 〇〇〇〇の件
 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

第2号議案 〇〇〇〇の件
 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

以上をもって本取締役会の議案を終了したので、議長は閉会を宣し、〇〇時〇〇分に散会した。
上記議題及び決議内容を明確にするため、この議事録を作成し、議長並びに出席取締役及び監査役は次に記名押印する。

令和〇〇年〇〇月〇〇日
株式会社〇〇〇〇取締役会
~~~以下記名押印欄~~~

取締役・監査役の役員全員がWEB会議の参加の場合は?


次に、取締役・監査役の役員全員がWEB会議参加の場合について考えていきます。
法的解釈の整理から入ります。
 

法的な解釈


会社法施行規則では、開催の場所や方法について、次のように記載があります。

第百一条 法第三百六十九条第三項の規定による取締役会の議事録の作成については、この条の定めるところによる。
2 略
3 取締役会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
一 取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
以下略

会社法施行規則


この会社法施行規則で言う場所とは、リアルな実際に存在する場所のことを指しています。
つまり、WEB会議などでの参加が認められているだけで、あくまでもリアルな実際に存在する場所が必要になります。
「当会社本店」などの場所を開催場所として指定しつつ、全員がWEB会議などで参加している、という体裁を取る必要があるのです。
その「当会社本店」に誰も出席している人がいなかったとしてもです。
(表現を変えると、出席の方法については、その出席の方法についての記載が求められているだけで、取締役会の開催場所について、出席者が物理的にいることが強制されているわけではない。)

招集通知や議事録といった書面には、開催場所には実際に誰もいなかったとしても、リアルな実際に存在する場所を開催場所として記載しましょう。
取締役会の招集手続きに瑕疵があると、取締役会決議は無効となってしまうので、注意が必要です。

参加の場所について、WEB会議などで参加した場合、参加した場所の情報を記載するのが一般的です。
しかし、この場所の情報は登記などの手続きにおいて求められることがあるだけの付加的な情報となります。
(テレビ会議、電話会議などで参加した出席取締役については、その出席場所について議事録に記載する方が妥当、という見方もあるにはある。:旬刊商事法務 No1426 テレビ会議システムを利用した取締役会の運営)
どこかの会社の会議室などから参加した場合は、番地まで含めて記載し、個人宅から参加した場合は「個人宅」と記載すればよいでしょう。

また、参加の方法ですが、上述の通り、議事録上においては「出席の方法」が求められています。
議事録の記載上の重要論点としては、双方向の意思伝達に問題が無いことです(双方向性と即時性)。
そのため、まずはじめに双方向の意思伝達に問題が無い旨の情報、および議事が全て終了後に障害が無かった旨の情報を議事録に記載することが重要になります。
意思伝達に問題がなければ、テレビ会議でも、WEB会議でも、出席の方法は何でもよいのです。

取締役間の協議と意見交換が自由にでき、相手方の反応がよく分かるようになっている場合、すなわち、各取締役の音声と画像が即時にほかの取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組み

法務省民事局 規制緩和等に関する意見・要望のうち、現行制度・運用を維持するものの理由等の公表について


次に、招集通知と議事録について、取締役・監査役の役員全員がWEB会議システム「Zoomミーティング」で参加した場合を例に、記載例を提示します。

取締役会招集通知の記載例


令和〇〇年〇〇月〇〇日

取締役各位
監査役各位

株式会社〇〇〇〇

代表取締役〇〇〇〇


取締役会招集ご通知


拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、当社取締役会を下記のとおり開催いたしますので、ご出席くださいますようお願い申し上げます。

敬具



1.日時 令和〇〇年〇〇月〇〇日
2.場所 当会社本店〇〇会議室
Web会議システム「Zoomミーティング」にて参加される場合は以下のURLにてご参加ください。
https://〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
3.目的事項
報告事項 〇〇〇〇の件
決議事項 第1号議案 〇〇〇〇の件
     第2号議案 〇〇〇〇の件

以上

 

取締役会議事録の記載例


取締役会議事録


開催日時 令和〇〇年〇〇月〇〇日〇〇時〇〇分
開催場所 当会社本店〇〇会議室
出席者 代表取締役 〇〇〇〇(議長)
取締役 〇〇〇〇
    〇〇〇〇
    〇〇〇〇
監査役 〇〇〇〇
    〇〇〇〇
    〇〇〇〇

以下の出席者は、Web会議システム「Zoomミーティング」により参加した。
代表取締役 〇〇〇〇(個人宅)
取締役 〇〇〇〇(個人宅)
取締役 〇〇〇〇(個人宅)
取締役 〇〇〇〇(■■■■株式会社会議室 東京都〇〇区〇〇町〇番〇号)
監査役 〇〇〇〇(個人宅)
監査役 〇〇〇〇(個人宅)
監査役 〇〇〇〇(個人宅)

議事の経過の要領及びその結果

定刻、代表取締役〇〇〇〇は議長席につき、Web会議システムにより、出席者の音声が即時に他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっていることを確認の後、取締役会の開会を宣し、以下の議事に入った。

報告事項
〇〇〇〇の件
 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

決議事項
第1号議案 〇〇〇〇の件
 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

第2号議案 〇〇〇〇の件
 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

以上をもって本取締役会の議案を終了したので、議長は閉会を宣し、〇〇時〇〇分に散会した。
本日のWeb会議システムを用いた取締役会は、終始異状なく議題の審議を終了した。
上記議題及び決議内容を明確にするため、この議事録を作成し、議長並びに出席取締役及び監査役は次に記名押印する。

令和〇〇年〇〇月〇〇日
株式会社〇〇〇〇取締役会
~~~以下記名押印欄~~~

テレビ会議や電話会議の場合の開催方法の書き方は?


テレビ会議や電話会議での取締役会開催の場合は、上記の「Web会議システム「Zoomミーティング」」や「WEB会議システム」部分を、単純に「テレビ会議システム」「電話会議」と置きかえれば問題ありません。

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最後に_IPO準備企業の留意点


以上、取締役・監査役の全員がWEB会議参加の場合の書類作成例を見てきました。

取締役会における招集通知や議事録は形式的な側面が強いものです。
そのため、IPOを目指していないような中小企業でしたら、全く関心の対象にもならないでしょう。

しかし、IPOを目指すようなベンチャー企業の場合は、経営体制の構築は重要な課題になります。
書類だけ体裁を整えれば良い、という問題でもなく、最近の審査においては、その実態についても追及される傾向が強くなっています。

慣れてしまえば業務負担になるような内容でも無いので、決して軽視せず、確実に対応していくことが重要でしょう。

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ライター:ミチビク編集部

michibiku+は、取締役会、監査役会、監査等委員会の手続きをDXするクラウドサービス「michibiku」から生まれた、コーポレートガバナンス関連情報に特化したメディアです。 コーポレート・ガバナンスDXサービス「michibiku」だけでは解決しきれない様々な悩みや課題に対して、実務に直結する情報を発信していきます。

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