監査等委員会設置会社とは?移行は何から始める?メリットと事務局実務を解説

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監査等委員会設置会社とは?移行は何から始める?メリットと事務局実務を解説

近年、上場企業の間で「監査等委員会設置会社」への移行が進んでいます。東京証券取引所が2025年7月に公表した資料によると、プライム市場では監査等委員会設置会社の数が初めて監査役会設置会社を上回りました。

本記事では、ガバナンス改革を推進する事務局の方に向けて、制度の基本から監査役会設置会社との違い、移行のメリット・デメリット、そして移行の具体的なステップまでをわかりやすく解説します。移行後の運用まで見据えた準備の参考にしてください。

監査等委員会設置会社とは?仕組みと組織図でわかる3つの特徴

まずは、監査等委員会設置会社がどのような仕組みなのか、基本的な特徴から確認していきましょう。制度の全体像をつかむことで、この後の比較や移行手順も理解しやすくなります。

取締役が監査を担うという最大の特徴

監査等委員会設置会社は、2014年に成立し2015年5月に施行された改正会社法により新設された組織形態です。最大の特徴は、監査を担う立場が「監査役」ではなく「取締役」である点にあります。監査役は取締役会での議決権を持ちませんが、監査等委員は取締役として議決権を行使できるため、経営判断そのものに関与しながら監督機能を発揮できる仕組みになっています。

3名以上・過半数が社外という監査等委員会の要件

監査等委員会は、3名以上の監査等委員である取締役で構成され、その過半数は社外取締役でなければならないと会社法で定められています。また、監査等委員である取締役は、業務執行取締役や使用人を兼ねることができず、独立性を確保する仕組みが設けられています。この要件を踏まえると、監査等委員会設置会社では最低でも2名の社外取締役が必要になる計算です。

参考:e-Gov法令検索「会社法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

組織図で見る監査等委員会設置会社の機関構成

監査等委員会設置会社の機関構成は、株主総会のもとに取締役会が置かれ、その内部に監査等委員会が設けられる形になります。取締役会には、業務執行を担う取締役と、監査を担う監査等委員である取締役が併存する点が特徴です。監査役会設置会社とは異なり、独立した機関としての監査役や監査役会は置かれません。

一方で、会計監査人の設置は必須とされており、外部監査と内部の委員会監査が連携する仕組みになっています。

監査役会設置会社との違いは?実務に影響する4つの比較ポイント

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監査等委員会設置会社と監査役会設置会社は、どちらも取締役の職務を監査する仕組みを持ちますが、実務上の違いは多岐にわたります。ここでは、特に影響の大きい4つのポイントを比較します。

監査役と監査等委員―議決権の有無という違い

監査役は取締役会に出席して意見を述べる権限を持ちますが、議決権はありません。一方、監査等委員は取締役であるため、取締役会の議決権を持ちます。賛否の意思表示を通じて経営判断そのものに影響を及ぼせる点が、監査役会設置会社との大きな違いです。

監査のやり方の違い(個々の監査役vs委員会としての監査)

監査役会設置会社では、各監査役がそれぞれ独立して権限を行使する仕組みが基本です。一方、監査等委員会設置会社では、監査の権限は監査等委員会という組織に帰属し、委員会が選定した監査等委員が実際の監査を行う形をとります。個人の判断に頼る仕組みから、組織としての監査へと考え方が変わる点を押さえておきましょう。

取締役の任期の違い(監査役4年、監査等委員2年、一般取締役1年)

任期にも違いがあります。監査役の任期は4年ですが、監査等委員である取締役の任期は2年で、短縮することはできません。一方、監査等委員以外の取締役の任期は、定款や株主総会の決議によって1年に短縮されるケースが一般的です。また、監査等委員である取締役の解任には、株主総会の特別決議が必要とされており、職務の独立性が制度的に守られています。

業務執行の決定を取締役に委任できる範囲の違い

監査役会設置会社では、重要な業務執行の決定を各取締役に委任することができず、必ず取締役会で決議する必要があります。これに対して監査等委員会設置会社では、定款で定めることにより、重要な業務執行の決定権限の一部を各取締役に委任できます。これにより、取締役会は個別案件の審議から解放され、中長期的な戦略や監督業務に注力しやすくなります。

監査役会設置会社との比較

項目 監査役会設置会社 監査等委員会設置会社
監督者の立場 監査役 取締役(監査等委員)
議決権 なし あり
監査のあり方 各監査役が独立して権限行使 委員会として組織的に監査
監督者の任期 4年 2年(短縮不可)
業務執行の委任 原則不可 定款の定めにより一部可能

監査等委員会設置会社に移行する3つのメリット

制度の仕組みを踏まえたうえで、実際に移行を検討する際に押さえておきたいメリットを見ていきましょう。

社外役員の枠を共通化できる

監査役会設置会社では、社外監査役と社外取締役をそれぞれ確保する必要がありますが、監査等委員会設置会社では、監査等委員である社外取締役がその両方の役割を担います。これにより、社外人材の確保にかかる負担を軽減しながら、必要な社外比率を満たしやすくなります。

取締役会を戦略議論に集中させ、迅速な意思決定を実現できる

重要な業務執行の決定を各取締役へ委任することで、取締役会に付議する案件を絞り込むことができます。これにより、取締役会での議論を中長期的な戦略や重要事項に集中させやすくなり、意思決定のスピードも向上します。

海外投資家からのガバナンス評価を高めやすい

日本独自の監査役制度は、海外投資家にとって理解しづらい面があるといわれています。欧米に近い委員会制度である監査等委員会設置会社への移行は、ガバナンスの透明性向上として評価されやすく、投資家との対話を後押しする材料になり得ます。実際に、東京証券取引所の公表資料でも、プライム市場において監査等委員会設置会社への移行が着実に進んでいることが示されています。

参考:東京証券取引所「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況」(2025年7月18日)
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/ind-executive/nlsgeu000005va0p-att/mklp77000000c07i.pdf

移行前に知っておきたい2つのデメリット・注意点

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メリットがある一方で、移行前に理解しておくべき注意点もあります。ここでは代表的な2つを紹介します。

常勤の監査等委員を置く義務がないことによる情報収集リスク

監査等委員会には、常勤の委員を置く法律上の義務がありません。そのため、非常勤の社外取締役だけで委員会が構成されると、日常的な情報収集が不十分になるおそれがあります。内部監査部門との連携を強化するなど、情報の流れを補う工夫が必要です。

委員会運営に伴う事務局の業務負担増

監査等委員会の設置により、これまでの監査役対応に加えて、委員会の招集や資料準備、議事録作成といった業務が新たに発生します。特に社外取締役が中心となる委員会では、事前の情報提供や日程調整に時間がかかりやすく、事務局の負担が増える点も見込んでおく必要があります。

監査等委員会設置会社への移行ステップ|何から始める?

ここからは、実際に移行を進める際の具体的な手順を紹介します。何から着手すればよいか迷う方は、まずこの5つのステップに沿って準備を進めてみましょう。

ステップ1.現状評価と役員構成の検討

最初のステップは、自社のガバナンス上の課題を整理し、監査等委員会にふさわしい人数や社外比率を検討することです。多くの場合、現任の社外監査役が監査等委員である社外取締役へ移る形でスタートし、その後、より適切な構成へ見直していくケースが見られます。

ステップ2.定款変更案の作成と株主総会決議

監査等委員会の設置や監査役会の廃止、業務執行の委任に関する規定など、複数の条文にまたがる定款変更が必要になります。これらの変更は株主総会の特別決議事項にあたるため、変更理由を丁寧に整理し、株主への説明準備を進めましょう。

ステップ3.監査等委員とそれ以外の取締役を区別して選任する

株主総会では、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役を区別して選任決議を行う必要があります。報酬についても同様に、監査等委員とそれ以外の取締役を区別して設定しなければなりません。

ステップ4.社内規程の整備と内部監査部門との連携

取締役会規程の見直しに加えて、新たに「監査等委員会規程」を整備する必要があります。あわせて、内部監査部門から監査等委員会への報告ルートを明文化しておくことも大切です。常勤の委員を置かない場合は特に、情報伝達の仕組みを丁寧に設計しておく必要があります。

ステップ5.登記手続きと適時開示への対応

株主総会での決議が成立してから2週間以内に、監査等委員会設置会社である旨や役員の氏名などを登記する必要があります。上場企業の場合は、あわせて適時開示やコーポレートガバナンス報告書の更新も進めましょう。

移行の5ステップ

ステップ 内容 主な確認ポイント
1.現状評価 役員構成の検討 社外比率、人選の方向性
2.定款変更 株主総会の特別決議 監査役会廃止・委任規定の整備
3.役員選任 区別した選任・報酬設定 監査等委員とそれ以外の区分
4.規程整備 監査等委員会規程の作成 内部監査部門との連携
5.登記・開示 2週間以内の登記申請 適時開示・報告書更新

移行後の取締役会運営を形骸化させない仕組みづくり

移行の手続きが完了しても、そこがゴールではありません。むしろ、移行後にどう運用していくかが、事務局にとっての本当の課題となります。

社外取締役への情報提供とアジェンダ設計の高度化

監査等委員である社外取締役が実効的な監督を行うためには、事務局からの質の高い情報提供が欠かせません。資料をただ共有するだけでなく、要点を整理した形で提供し、限られた時間で的確な判断ができる環境を整えることが重要です。あわせて、中長期的な議論に十分な時間を割けるよう、年間を通じたアジェンダ設計にも配慮が必要です。

実効性評価をデータで継続的に見直す視点

制度を形だけのものにしないためには、定期的な実効性評価が欠かせません。アンケートだけに頼ると評価が形式的になりやすいため、議論の傾向や時間配分といった客観的なデータもあわせて活用することで、より実質的な評価につなげやすくなります。

michibikuで委員会運営と実効性評価を一元管理する

こうした課題に対応する手段として、取締役会DXプラットフォーム「michibiku」の活用が挙げられます。監査等委員会と取締役会、双方の招集や資料共有、議事録作成を1つのプラットフォームで管理できるため、事務局の定型業務を大幅に効率化できます。

さらに、AIによる議事録の要約・議論傾向の可視化機能や、実効性評価の集計機能も備えており、移行後のガバナンス運用を実質的なものにしていく助けとなります。委員会運営の負担軽減や実効性評価の高度化にお悩みの方は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ:監査等委員会設置会社への移行は「制度理解」と「運用設計」の両輪がカギ

監査等委員会設置会社は、取締役が議決権を持ちながら監査を担う、機動的なガバナンスに適した組織形態です。社外役員の枠を共通化できる点や、取締役会を戦略議論に集中させられる点は大きなメリットですが、常勤委員の不在による情報収集リスクなど、注意すべき点もあります。

移行には定款変更から登記まで5つのステップを踏む必要があり、事務局には緻密な準備が求められます。移行後の運用まで見据えた体制づくりにお悩みの方は、michibikuの導入もあわせてご検討ください。