2026.10.19
コーポレートガバナンス・コードとは?コーポレートセクレタリーの日本実装課題
2026年、コーポレートガバナンス・コードは大きな転換点を迎えています。今回の改訂案では、形だけの対応から一歩進んだ「実質的な取り組み」への転換が打ち出されました。特に注目したいのが、取締役会を支える事務局、いわゆるコーポレートセクレタリーの機能強化です。
しかし、海外で確立されたこの専門職を、日本企業がどう実装すればよいのか悩む担当者は少なくありません。本記事では、コードの基本から2026年改訂の要点、そして事務局が戦略パートナーへ進化するための実装アプローチまでをわかりやすく解説します。
コーポレートガバナンス・コードとは?基本原則と仕組みをやさしく解説
まずは、コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方から確認しましょう。仕組みを理解しておくことで、後述する改訂内容の意味もつかみやすくなります。
コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の目的とは
コーポレートガバナンス・コードは、上場企業が持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るための行動指針です。2015年に金融庁と東京証券取引所によって策定され、日本企業の経営のあり方を規定してきました。
最大の目的は、リスク回避のような守りの側面だけでなく、健全な意思決定を後押しし、企業の稼ぐ力を高めることにあります。企業がステークホルダーと適切に向き合い、収益力を改善するための指針といえるでしょう。
基本原則・原則・補充原則の3層構造
コーポレートガバナンス・コードは、大きな方向性を示す「基本原則」、それを具体化した「原則」、さらに詳しい内容を補う「補充原則」という3層の構造で成り立ってきました。これまではこの3層すべてが遵守の対象とされていましたが、2026年の改訂案ではこの構造が見直されます。
改訂後は基本原則と原則が中心的な遵守の対象となり、廃止された補充原則の多くは、各原則の実践を助ける「解釈指針」という新しい文書へ引き継がれる見通しです。
「コンプライ・オア・エクスプレイン」の考え方
コーポレートガバナンス・コードの大きな特徴は、「コンプライ・オア・エクスプレイン(遵守するか、しない場合はその理由を説明するか)」という仕組みにあります。すべての原則を一律に守らせるのではなく、自社の状況に応じて対応方法を選べる柔軟な設計です。
原則を実施しない場合には、株主や投資家が納得できる説明が求められます。形式的に遵守したと表明するだけでなく、自社の実情に基づいた丁寧な説明こそが重視されている点を押さえておきましょう。
参考:金融庁「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」
https://www.fsa.go.jp/singi/revision_corporategovernance/index.html
2026年コーポレートガバナンス・コード改訂の要点|押さえておきたい4つのポイント
2026年4月10日、金融庁と東京証券取引所からコーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表されました。これまでの「形式整備」の段階から、意思決定の質そのものを問う段階へと踏み込んだ内容です。ここでは、事務局担当者が押さえておきたい4つのポイントを整理します。
改訂の背景―「形式」から「実質」への転換が求められる理由
コーポレートガバナンス・コードは、2015年の策定以降、2018年と2021年に改訂されてきましたが、今回は2021年以来5年ぶりの改訂です。これまでの改訂を経て原則の数が増え、企業の対応がチェックリスト的な形式対応にとどまっているとの指摘がありました。
今回の改訂案では、こうした状況を是正し、企業が中長期的な視点で成長投資や事業の見直しに取り組める環境を整えることが重視されています。
補充原則の廃止と「解釈指針」の新設
改訂案では補充原則が廃止され、新たに「解釈指針」という文書が設けられることになりました。原則の内容そのものは大きな方向性を示すものに絞り込む一方で、具体的な実践のポイントやよい取り組み例を解釈指針として示す狙いがあります。
解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではありませんが、実際にコードを実践するうえでの重要な手がかりとなります。事務局にとっては、自社の取り組みを見直す際の参考資料として活用できるでしょう。
独立社外取締役の過半数化と取締役会事務局の機能強化
取締役会に占める独立社外取締役の割合は、近年増加傾向にあります。彼らの監督機能を十分に発揮してもらうためには、事務局からの適切な支援が欠かせません。こうした背景から、改訂案では取締役会事務局、いわゆるコーポレートセクレタリーの機能強化が明記されました。
社外取締役が能動的に情報を得られる環境を整えることが、事務局にとって重要な役割として位置づけられています。
有価証券報告書の総会前開示という新ルール
株主が十分な情報をもとに適切な判断を下せるよう、改訂案では有価証券報告書を株主総会前に提出することが望ましいとされました。解釈指針では、総会開催日のおおむね3週間以上前の提出が望ましいとの考え方が示されています。これまでは総会後に提出する企業も多く見られたため、開示スケジュールや社内の連携体制を見直す必要が出てくるでしょう。
参考:金融庁「コーポレートガバナンス・コード改訂案の公表について」
https://www.fsa.go.jp/news/r7/singi/20260410.html
2026年改訂の主なポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 解釈指針の新設 | 補充原則を見直し、実践の参考となる解釈指針を設置 |
| 独立社外取締役の重視 | 過半数化を踏まえた役割・支援体制の強化 |
| 事務局の機能強化 | コーポレートセクレタリーとしての体制整備を明記 |
| 有報の総会前開示 | 総会開催日のおおむね3週間以上前の提出が望ましいとの考え方 |
日本企業が直面する「コーポレートセクレタリー」実装の壁
コード改訂の流れを受け、事務局に求められる役割はますます高度になっています。ここでは、海外の仕組みと比較しながら、日本の事務局が直面する課題を具体的に見ていきましょう。
海外で確立されたコーポレートセクレタリーとは
英国などでは、法令に基づいて「カンパニー・セクレタリー」という専門職の設置が定められています。彼らは議事録の作成や法令遵守の管理だけでなく、取締役会全体への助言も行う専門家です。
すべての取締役がその助言を受けられる立場にあり、ガバナンスを支える要として位置づけられています。日本ではこれに相当する専門職がまだ十分に根付いておらず、法務や総務の担当者が本来の業務と兼任で対応しているのが実情です。
事務局の役割再定義―「事務」から「戦略パートナー」への転換
これまでの取締役会事務局は、資料作成や日程調整といった事務的な業務が中心でした。しかし今後は、議論が建設的に進むよう議題を整理し、取締役への丁寧な事前説明を行うことが重要になります。
執行側と監督側の橋渡し役として、会議の質そのものを高める戦略パートナーへと役割を広げていく必要があるでしょう。この転換は一朝一夕には進みませんが、意識の持ち方を変えることが第一歩となります。
社外取締役への情報提供とアジェンダセッティングの高度化
社外取締役が実効性の高い監督を行うためには、質の高い情報提供が欠かせません。資料をただ事前に共有するだけでなく、要点を整理・分析した形で提供することが事務局の重要な役割になっています。
あわせて、中長期的な戦略議論に十分な時間を割けるよう、年間を通じたアジェンダ設計にも事務局が関与することが期待されています。
英国モデルに学ぶ、複数会議体を一元管理する組織設計のヒント
英国のカンパニー・セクレタリーは、取締役会だけでなく複数の委員会運営も含めて統合的に管理する役割を担っています。日本企業でも任意の委員会を設置する動きが広がる中、複数の会議体をそれぞれ別々に管理していると、事務局の負担が増え、情報も分散してしまいます。
複数の会議体・委員会の運営を1つの仕組みで統合的に管理することが、組織としての監督機能を高めるヒントになるでしょう。
実効性評価を形骸化させない!データで進めるPDCAの回し方
コード対応の中でも特に形骸化しやすいのが、取締役会の実効性評価です。ここでは、評価を実質的なものにするためのデータ活用のアプローチを紹介します。
実効性評価アンケートがマンネリ化する理由
多くの企業では、コード対応として毎年アンケート形式の実効性評価を実施しています。しかし、同じような設問を繰り返すうちに回答が形式的になり、真の課題が見えづらくなるケースも少なくありません。また、集計や分析に時間がかかり、結果を次のアクションに活かすタイミングを逃してしまうことも、マンネリ化を招く要因の一つです。
他社スコア比較で自社のガバナンス水準を客観的に把握する
実効性評価の質を高める方法の一つが、他社とのスコア比較です。自社のガバナンス水準がグローバルな基準と比べてどの位置にあるのかを客観的な数値で把握できれば、改善すべき課題がより明確になります。投資家に対しても、感覚的な説明ではなく、データに基づいた説得力のある説明が可能になるでしょう。
AI議事録の要約・分析で「議論の質」を可視化する付議事項データで審議の偏りを客観的に把握する
実効性評価の精度を高めるには、日々の会議運営で蓄積されるデータの活用が有効です。たとえば付議事項を一覧として記録しておけば、どの分野の議案に偏っているかを後から確認できます。決議事項が大半を占め、中長期の戦略を審議する時間が確保できていないといった傾向も見えてくるでしょう。
また、AIによる自動文字起こしを使えば、議事録作成の負担を抑えながら発言内容を正確に残せます。感覚的な振り返りにとどめず、運営データをもとに課題を特定することが、実効性評価を実のあるものにする鍵となります。
近年は、AIを活用して取締役会の議事録を要約し、発言量や議論の傾向を分析する取り組みも広がっています。中長期的な戦略に関する議論にどれだけ時間を割けているかをデータで示すことができれば、議長やCEOに対して具体的な改善提案がしやすくなります。感覚だけに頼らず、議論の質そのものを数値で捉えることが、実効性評価を実のあるものにする鍵となります。
michibikuによる複数会議体の一体運営とPDCAの実装
こうした課題に応えるツールとして活用されているのが、取締役会DXプラットフォーム「michibiku」です。複数の会議体や委員会の事務局運営を1つのプラットフォームで統合できるほか、AIによる自動文字起こしや付議事項の一覧化、実効性評価アンケートの集計機能を通じて AIによる議事録の要約や議論傾向の可視化、他社スコア比較といった機能を通じて、実効性評価のPDCAを実質的に回すことができます。
michibikuの主な機能
| 機能 | 特徴とメリット |
|---|---|
| 招集・議事録・保管の一元管理 | 定型業務をオンラインで完結し、事務局の負担を軽減 |
| AI自動文字起こし AI議事録要約 | 会議音声を自動でテキスト化し、議事録作成の負担を軽減 発言量や議論傾向を可視化し、議論の証跡を残しやすくする |
| 実効性評価の集計 | アンケートの集計・分析をデジタル化し、PDCAを後押し |
| 他社スコア比較 | グローバルな水準との比較で自社の課題を明確化 |
まとめ:コーポレートガバナンス・コードの実装は「事務局の進化」がカギ
2026年のコーポレートガバナンス・コード改訂は、企業に「形式」から「実質」への転換を求めています。取締役会が実効性の高い議論を行い、企業価値を高めていくためには、その運営を支える事務局の進化が欠かせません。
事務局がコーポレートセクレタリーとしての役割を意識し、データに基づいた戦略的な意思決定を支援する立場へと進化していくことが、これからのガバナンス強化のカギとなるでしょう。事務局の負担軽減と取締役会の実効性向上を同時に叶えたいとお考えの方は、michibikuの導入をぜひご検討ください。





