2026.10.19
DXガバナンスコードとは?デジタルガバナンスコードの5つの柱と事務局の対応策
デジタル技術の進化により、多くの企業が変革を迫られています。経済産業省が策定した「デジタルガバナンス・コード」は、経営者が企業価値を向上させるための重要な指針です。2024年に公表された最新版の3.0では、DXを経営そのものと一体化させる考え方が強調されています。
本記事では、コードの要点からDX認定制度との関係、そして取締役会や事務局が実践すべき対応策までを解説します。自社のガバナンス体制をアップデートする第一歩として、ぜひお役立てください。
DXガバナンスコード(デジタルガバナンス・コード)とは?経営者が意識すべき3つの視点
デジタルガバナンス・コードとは、経営者がデジタル技術を活用して企業価値を向上させるために実践すべき事項をまとめた指針です。まずは、経営層が持つべき基本的な考え方を確認しましょう。
DXを「コスト」ではなく「投資」と捉える経営指針
DX推進において重要なのは、経営トップの意識です。2024年に公表された最新版の3.0では、「DXに投じる資金はコストではなく、価値創造に向けた投資である」という考え方が明記されました。
単なるITツールの導入による効率化にとどまらず、新たな収益につながるビジネスモデルの創出まで見据える必要があります。経営者は、DXを将来の競争優位性を確立するための戦略的な投資として位置づけることが求められています。
参考:経済産業省「デジタルガバナンス・コード」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html
人的資本経営とも整合する「DX経営に求められる3つの視点」
3.0では、DX経営を進めるうえで次の3つの視点を持つことが求められています。
- 経営ビジョンとDX戦略の連動:持続的な成長のため、経営ビジョンとDX戦略を一体として策定する
- 理想と現状のギャップの定量把握:目指す姿と現状の差を数値で捉え、継続的に見直す
- 企業文化への定着:変革が一時的な取り組みで終わらず、組織文化として根づくことを目指す
これらは、人的資本経営に関する報告書で示された視点とも整合しており、組織全体の変革を後押しする土台となります。
参考:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~を策定しました」
https://www.meti.go.jp/press/2024/09/20240919001/20240919001.html
なぜ今、取締役会によるDX推進の監督が求められているのか
デジタルガバナンス・コードでは、DX推進はIT部門だけの課題ではなく、経営陣や取締役会が自ら担うべき役割であるとされています。取締役会には、経営ビジョンやDX戦略の方向性を示すだけでなく、その進捗が適切に進んでいるかを継続的に監督する責任が求められています。
デジタル技術の進化が社会や競争環境を変えていく中で、経営陣が主体的にリーダーシップを発揮できているかを確認する視点が欠かせません。
実践の要!デジタルガバナンスコードを構成する5つの柱
デジタルガバナンス・コードは、具体的な取り組みを5つの柱として整理しています。それぞれが相互に関連しており、全体として整合性を持たせることが重要です。
経営ビジョン・ビジネスモデルの策定(柱1)
最初の柱は、デジタル技術の進化が自社にもたらす影響をリスクと機会の両面から捉え、目指すべき経営ビジョンとビジネスモデルを描くことです。単なる理想論にとどめず、対外的に公表できる形にまとめることが求められます。
DX戦略の策定(柱2)
次の柱では、経営ビジョンを実現するための具体的な方策として、データとデジタル技術を活用したDX戦略を策定します。短期的な施策だけでなく、中長期的な道筋も含めて、いつまでに何を達成するのかを具体化することが望ましいとされています。
組織づくり・人材育成・ITシステム整備を含むDX戦略の推進(柱3)
3つ目の柱は、策定した戦略を実際に動かすための体制づくりです。戦略を推進する責任者の設置や組織の設計、デジタル人材の育成・確保、そして技術的な負債やサイバーセキュリティのリスクを防ぐIT環境の整備が含まれます。戦略と実行体制を切り離さず、一体で整えることが重視されています。
成果指標の設定とステークホルダーとの対話(柱4・5)
4つ目の柱では、DX戦略がどの程度進んでいるかを測る成果指標を定め、自己評価を行うことが求められます。そして5つ目の柱では、こうした取り組みの成果を「価値創造ストーリー」として、投資家をはじめとするステークホルダーに発信し、対話を重ねることが重視されています。
デジタルガバナンス・コード3.0の5つの柱
| 柱 | 内容 |
|---|---|
| 柱1 | 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定 |
| 柱2 | DX戦略の策定 |
| 柱3 | DX戦略の推進(組織・人材・ITシステム) |
| 柱4 | 成果指標の設定・DX戦略の見直し |
| 柱5 | ステークホルダーとの対話 |
DX認定制度との関係は?取得によるメリットと申請の流れ
デジタルガバナンス・コードの実践度を測る一つの指標が、国の「DX認定制度」です。ここでは、両者の関係と、認定を受けることで得られるメリットを紹介します。
認定基準はデジタルガバナンスコードの「基本的事項」に対応
DX認定制度は、情報処理の促進に関する法律にもとづき、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応している企業を国が認定する仕組みです。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)がDX認定制度事務局として、相談対応や審査事務を担っています。
この制度はDXの「完成」を求めるものではなく、DXに取り組む準備が整っているかどうかを評価するものであるため、変革の途上にある企業でも、方針と体制が整っていれば取得を目指せます。
参考:経済産業省「DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第二十八条に基づく認定制度)」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/dx-nintei.html
認定取得で活用しやすくなる支援策
DX認定を取得すると、各種補助金の審査で加点対象となったり、公的金融機関からの融資制度を利用しやすくなったりするなど、事業者向けの支援策を活用しやすくなります。なお、DX関連投資に対する税額控除・特別償却を措置していた「DX投資促進税制」は、2025年3月31日をもって廃止されました。
支援策の内容は年度ごとに見直されるため、申請を検討する際は経済産業省やIPAの最新情報を確認することをおすすめします。また、国の認定を受けているという事実自体が、取引先や採用活動における信頼性の向上にもつながります。
中堅・中小企業向け「実践の手引き」の活用
経済産業省では、中堅・中小企業向けに「デジタルガバナンスコード実践の手引き」も公開しています。全国の優良事例を紹介しながら、DXへの取り組みを段階的な手順で解説しているため、大企業向けの内容だけでは自社に当てはめにくいと感じる場合は、こうした手引きを参考にするとよいでしょう。
まずは身近な業務のデジタル化から着手し、小さな成功体験を積み重ねていくことが推奨されています。
取締役会はDX推進をどう監督すべきか
デジタルガバナンス・コードが取締役会の役割を重視していることは、すでに触れた通りです。ここでは、具体的にどのような監督が求められるのかを掘り下げます。
DX戦略の策定・実行を「経営陣・取締役会の役割」とする位置づけ
取締役会は、DXをIT部門に丸投げするのではなく、自らの役割として主体的に関与する必要があります。DX投資が事業計画の達成にどう寄与するのか、その道筋を理解したうえで承認することが求められます。あわせて、推進に伴うサイバーセキュリティのリスクを把握し、必要な投資を後押しすることも重要な監督業務です。
DX投資の意思決定プロセスをどう可視化するか
DXへの投資は、成果が見えるまでに時間がかかることも少なくありません。投資案件が当初の計画通りに進んでいるか、どのようなつまずきが生じているかを適時に把握できる体制を整えることで、リソース配分の見直しも迅速に行いやすくなります。
DX推進指標を用いた自己診断と継続的なモニタリング
経済産業省やIPAが提供する「DX推進指標」を活用すれば、自社のDXの成熟度を段階的に自己診断できます。一度きりの評価で終わらせず、毎年継続してモニタリングすることで、自社の強みと課題が明確になり、取り組みの改善につなげやすくなります。
事務局の第一歩!ガバナンスコードを実践する3つの手順
デジタルガバナンス・コードへの対応というと大掛かりに聞こえますが、実は取締役会運営そのものの見直しから始めることができます。ここでは、事務局が取り組める3つの手順を紹介します。
手順1.取締役会のペーパーレス化で時間を創出する
まず取り組みたいのが、資料印刷や配布、押印による決裁といったアナログな事務作業の削減です。事務局の定型業務の負担を軽減することで、本来注力すべき議題準備や戦略立案に時間を割けるようになります。資料共有がスムーズになれば、社外取締役をはじめとする役員の事前確認の時間も確保しやすくなり、当日の議論の質向上にもつながります。
手順2.AI議事録やデータ活用で「議論の質」を可視化する
次に、AIを活用して取締役会の議論内容を定量的に分析します。発言量や議論の傾向を可視化することで、中長期の戦略議論にどれだけ時間を割けているかをデータとして経営陣に示せます。これは、デジタルガバナンス・コードの柱4(成果指標の設定)を実践することにも直結します。感覚的な振り返りではなく、客観的なデータにもとづくことで、取締役会の改善に向けた建設的な議論が生まれやすくなります。
手順3.michibikuで実効性評価と他社比較を継続的に行う
最後に、取締役会DXプラットフォーム「michibiku」のようなツールを活用し、PDCAを仕組み化します。テンプレートを使ったアンケートで実効性評価を効率的に実施し、他社スコアとの比較を通じて自社の課題をグローバルな水準と照らし合わせられます。
これにより、デジタルガバナンス・コードが求める「不断の見直し」と「データにもとづくステークホルダーへの説明」を同時に進めやすくなります。事務局の定型業務を効率化しながら、自社の取締役会からDX経営を体現していきたい方は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ:DXガバナンスコードへの対応は「自社の取締役会」から始めるのが近道
デジタルガバナンス・コードへの対応は、単なる認定取得のためではなく、企業が持続的に価値を創造し続けるための羅針盤です。経営者がDXを未来への投資と位置づけ、取締役会がその進捗を適切に監督する体制を築くことが、企業の競争力を左右します。
そして、その変革の第一歩を担うのが事務局です。まずは取締役会のペーパーレス化や議論の可視化といった、足元のDXから着手してみてください。事務局の負担軽減とガバナンスの高度化を同時に進めたい方は、michibikuの導入もあわせてご検討ください。




