2026.10.19
取締役会議事録の書き方完全ガイド!作成負担を減らすコツとフォーマット見本
取締役会の議事録作成は、事務局にとって重い負担となる業務の一つです。法的な備え置き義務があるだけでなく、ガバナンスの質を証明する重要な書類でもあるため、気を抜けません。しかし、要点を押さえた「型」を身につけ、AIツールをうまく取り入れれば、作成時間を大幅に短縮しながら質の高い議事録を作ることができます。
本記事では、初めて担当する方でも今日から実践できる、法定記載事項の基本から書き方のコツ、フォーマット見本、作成負担を減らすAI活用法までを解説します。
取締役会議事録の基本ルールと3つの法的記載事項
取締役会議事録は、会社法および会社法施行規則によって作成が義務付けられています。適切に記録を残すことは、決議の有効性を証明し、役員が果たすべき義務を裏付けるためにも欠かせません。ここでは、最低限押さえておきたい3つの基本ルールを整理します。
「日時・場所・出席者」は必ず正確に記録する
会議の開催情報は、議事録の有効性を支える最も基本的な要素です。会社法施行規則第101条第3項では、開催された日時と場所の記載が義務付けられています。日時は開始・終了時刻まで24時間表記で正確に記録しましょう。また、出席した取締役および監査役の氏名も、役職順に正しく記載する必要があります。ウェブ会議で出席した役員がいる場合は、その出席方法も明記しておきましょう。
署名・記名押印と10年間の備え置き義務
書面で作成した議事録には、出席した取締役および監査役による署名または記名押印が必要です。これは会社法第369条第3項で定められた義務です。電磁的記録で作成する場合は、署名の代わりに電子署名を用いる方法も認められています。
完成した議事録は、会社法第371条第1項に基づき、本店に10年間備え置かなければなりません。株主や債権者から閲覧・謄写を求められる場合もあるため、丁寧な作成を心がけましょう。
「逐語録」ではなく「議事の経過の要領」でよい
法律が求めているのは、発言をすべて書き起こした逐語録ではありません。会社法施行規則第101条第3項第4号にあるとおり、「議事の経過の要領及びその結果」を記載すれば十分とされています。すべてを詳細に書こうとすると内容が冗長になり、かえって議論の本質が伝わりにくくなります。「どのような議題について、どう議論し、何が決まったか」という要旨を簡潔にまとめることが実務上のコツです。
参考:e-Gov法令検索「会社法施行規則」
https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012/
すぐに使える!議事録の書き方が分かるフォーマット見本
議事録の質を安定させるには、標準化されたフォーマットの活用が効果的です。ゼロから構成を考える手間が省けるだけでなく、記載事項の漏れも防げます。ここではWordとエクセルの見本、それぞれの使い分け方を紹介します。
Word形式で使える議事録フォーマット見本
正式な書類として保存・回覧する議事録には、Word形式が適しています。「標題」「日時・場所・出席者」「要旨(決定事項)」「議事の経過」「次回予定」の順に並べるのが基本です。
| 項目 | 記載内容の例 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社〇〇 |
| 開催日時 | 2026年〇月〇日14:00〜15:30 |
| 開催場所 | 本社会議室(一部オンライン出席あり) |
| 出席者 | 取締役〇名中〇名出席、監査役〇名出席 |
| 議長 | 代表取締役社長〇〇〇〇 |
| 決定事項(要旨) | (冒頭に決定事項をまとめて記載) |
| 議事の経過の要領 | (議論の流れを簡潔に要約) |
| 署名欄 | 出席取締役・監査役の署名または記名押印 |
決定事項を冒頭にまとめておくことで、多忙な役員でもひと目で結果を確認できます。
エクセルで管理する場合のフォーマット見本
複数の会議体を横断的に管理したい場合は、エクセル形式も有効です。1行を1議題として、列に「論点」「結論」「担当者」「期限」を設けると、進捗のフィルタリングや並べ替えがしやすくなります。議事録そのものはWordで正式に作成し、決定したタスクの追跡用としてエクセルを併用する運用も実務的です。
フォーマットを使う際に気をつけたいポイント
フォーマットはあくまで「型」であり、項目を埋めるだけでは不十分な場合があります。欄を埋めることに気を取られると、なぜその結論に至ったのかという背景が抜け落ちてしまうことがあります。あらかじめ「論点・結論・やるべきこと」の3点をセットで記載する欄を設けておくと、構造化を自然に促せます。テンプレートに頼りきらず、常に読み手にとっての分かりやすさを意識しましょう。
「使われる議事録」にするための3つの作成コツ
評価される議事録は、単なる過去の記録ではなく、関係者の次の行動を後押しする役割も持っています。情報を整理し、構造的に伝える工夫が事務局への信頼につながります。
結論から書く「逆ピラミッド構造」で配置する
読み手が知りたい情報を最優先に届けるため、結論を冒頭に置く「逆ピラミッド構造」を意識しましょう。多忙な役員は、まず「何が決まったのか」を素早く把握したいと考えています。「決定事項」→「やるべきこと」→「論点と結論」→「背景・保留事項」の順に再構成するだけで、読み返しにかかる時間を大きく減らせます。
アクションアイテムは「誰が・何を・いつまでに」を明記
会議後に放置されがちなタスクを確実に実行へつなげるには、やるべきことの書き方が鍵になります。記載する際は必ず「担当者」と「期限」をセットにし、独立した項目としてまとめましょう。例えば「〇〇さんが新価格表を9月20日までに作成する」というように、3つの要素を1行に収めるのが基本です。担当者のいないタスクは実行されにくく、期限のないタスクは先送りされがちだからです。
発言と決定事項を混同せず書き分けるコツ
議事録の混乱を防ぐには、個人の意見と組織としての決定事項を明確に区別して記載する必要があります。議論の過程では「誰が何を言ったか」を主語を補って記録し、最終的な合意事項は「決定」と分かるよう見出しなどで区別しましょう。特に取締役会では、特定の役員の異議を正確に記録しておくことが、後の責任追及から役員を守ることにもつながります。
質疑応答の書き方|会話形式での記載例と注意点
取締役会では、議案に対する質疑応答の記録も重要です。単に会話を書き写すのではなく、要点を押さえた形式に整えることで、後から振り返っても納得感のある記録になります。
質疑応答を会話形式で記載する基本フォーマット
質疑応答を記載する際は、発言者名を明記した上で、発言の要旨をビジネス文書として整えて記述します。話し言葉特有の冗長な表現や相づちは省き、意味を正確に伝えるために必要な主語や目的語を補いましょう。「〇〇取締役:(発言要旨)」という形式で、対話の構造を保ちながら整理して記述するのがコツです。
質疑応答の具体的な書き方の例
論点と結論をセットで示すと、議論の深さが一目で伝わります。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 論点 | 来期のプロモーション予算増額について |
| 質問(社外取締役A) | 増額分の投資対効果は、過去の実績と比較して妥当か |
| 回答(担当役員B) | 前回比1.2倍のリード獲得を見込んでおり、獲得単価は許容範囲内である |
| 結論 | A取締役の指摘を踏まえ、KPIの月次報告を条件に増額案を承認した |
役員の「責任」を証明する質疑応答の記録術
質疑応答の記録は、法的なリスク管理の観点からも重要です。会社法第369条第5項では、取締役会の決議に参加した取締役が議事録に異議を留めていない場合、その決議に賛成したものと推定すると定められています。そのため、重要な議案については、発言者本人に記載内容の確認を取るプロセスを挟むことが実務上望ましいといえます。
参考:e-Gov法令検索「会社法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
避けるべき「ダメな議事録」の典型的な3つのNG例
時間をかけて作成しても、評価を下げてしまう議事録には共通のパターンがあります。これらを避けるだけで、議事録の質は格段に向上します。
発言をそのまま並べただけの「日記形式」
最も多い失敗例は、会議の流れを時系列でひたすら書き連ねる「日記形式」です。読み手は「結局何が決まったのか」を探すために全文を読み返す必要があり、非効率になってしまいます。発言を時間順に並べるのではなく、重要度に沿って再構成する意識を持ちましょう。
主語や目的語が抜けている「メモの羅列」
話し言葉をそのまま書き写すと、当日出席していない人には意味が伝わりにくくなります。「それは検討します」といった主語のないメモでは、何をいつまでに検討するのかが不明確です。清書する際は、必ず主語や目的語を補い、第三者が読んでも誤解のない文章に整えましょう。
共有が遅く、アクションが死文化してしまうケース
議事録の価値は、共有スピードにも大きく左右されます。会議から1週間以上経ってから共有すると、参加者の記憶があいまいになり、確認に余計な手間がかかってしまいます。理想は、記憶が鮮明な当日中、遅くとも24時間以内の共有です。
事務局の負担を劇的に減らす!AI活用の4ステップ
ここまでのコツを実践しても、「作成に2〜3時間かかる」という悩みが残る事務局は少なくないでしょう。ここでは、AIを活用して負担を軽減する4つのステップを紹介します。
準備:アジェンダから論点を先読みする
効率的な議事録作成は、会議前のアジェンダ整理から始まります。事前に「何を決めるべきか」の論点を整理しておくと、当日の記録がスムーズになるだけでなく、AIによる要約の精度も高まります。取締役会DXプラットフォーム「michibiku」では、アジェンダ設定と連動して議事録の骨組みをあらかじめ準備できます。
記録:音声認識ツールで「下書き」を自動生成する
すべての発言を手作業でメモするのは、担当者にとって大きな負担です。音声認識による自動文字起こしを補助的に活用すれば、発言内容を素材として効率的に集められます。これにより事務局は、記録の手間から解放され、議論の核心をつかむことに集中できます。
加工:AI要約で「構造化」をワンクリックで実行
文字起こしされたデータから、決定事項ややるべきことをAIが自動で抽出できるツールも増えています。michibikuのAI議事録要約機能は、取締役会特有の議論の文脈を踏まえた要約に対応しており、事務局の編集作業を大幅に削減します。
高度化:議論の「質」をデータで可視化する
作成負担が軽減されると、事務局は記録係にとどまらず、議論の傾向をデータで可視化する役割も担えるようになります。中長期的な戦略議論にどれだけ時間を割けているかを数値で示せれば、議長やCEOへの報告資料としても活用でき、事務局の立ち位置を戦略パートナーへと引き上げることにつながります。
まとめ:型とコツを押さえれば議事録作成は効率化できる
取締役会議事録の作成は、法的な責任が重い一方で、正しい「型」とツールの活用によって大きく効率化できます。まずは本記事で紹介した「結論ファースト」の構成と、やるべきことの「担当者・期限」の明記から始めてみてください。
これだけでも、読み手である役員からの評価は変わるはずです。さらに一歩進んだ効率化を目指すなら、AIによる議事録の自動生成や議論の可視化も検討してみましょう。事務局の定型業務を減らし、空いた時間で議題の質を深める好循環が、コーポレートガバナンスの強化にもつながっていきます。





