取締役会がペーパーレスにできない事務局へ|リモート議事録の書き方と作成例

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取締役会がペーパーレスにできない事務局へ|リモート議事録の書き方と作成例

「取締役会をリモートで開催したいが、議事録の法的な書き方がわからない」と悩む事務局担当者は多いはずです。特にペーパーレス化を進める際、電子署名の有効性や開催場所の記載ルールに不安を感じる方も少なくありません。

しかし、会社法上のポイントさえ押さえれば、リモート開催も議事録の電子化も決して難しいものではありません。本記事では、Web会議での議事録作成ルールを、具体的な作成例とともに解説します。紙運用の限界を超え、事務局業務を効率化するための実務ガイドとしてご活用ください。

リモート取締役会は法的に有効?成立させる3つの基本条件

取締役会のリモート開催は、会社法上も認められた開催方法です。ただし、法的に有効な決議とするためには、画面越しに話すだけでなく、いくつかの条件を満たす必要があります。ここでは、事務局が押さえておくべき3つの基本条件を整理します。

一箇所に集まらなくても開催できる法律上の根拠

取締役が一箇所に集まらず、リモートで参加することは法的に問題ありません。会社法施行規則第101条第3項第1号では、開催場所にいない役員の出席方法を議事録に記載すべきことが定められており、リモート出席はあらかじめ想定された仕組みだからです。定款に特別の定めがなくても、Web会議や電話会議での開催は可能とされています。

「相互に即時の意見交換ができる状態」が必須条件

リモート開催では、出席者同士が即時かつ双方向に意思疎通でき、一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明ができる状態を保つことが必要です。音声による電話会議も認められており、映像や表情の確認が一律に必須というわけではありません。

法務省の見解でも、対面開催と同等に自由な意見交換ができる仕組みであれば、Web会議システムの利用が認められています。特定の役員とだけ個別に連絡を取り、その意見を伝えて採決するような方法は、この条件を満たさないため注意しましょう。

通信トラブルに備えた事前準備と対応ルール

通信が途切れ、声や映像のやり取りができなくなった場合、その間は当該取締役が出席していないものとして扱われる可能性があります。定足数や決議の結果に影響することもあるため、あらかじめ対応ルールを決めておくことが大切です。具体的には、接続が切れた際に審議を一時中断する、または電話回線へ切り替えるといった代替手段を用意しておきましょう。

参考:e-Gov法令検索「会社法施行規則」
https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012/

リモート・Web会議の議事録に書くべき4つの項目【作成例つき】

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リモート開催時の議事録には、対面開催とは異なる記載事項が求められます。ここでは、事務局が迷いやすい「開催場所」の考え方や、必ず入れておきたい「確認の一文」など、実務に即した4つのポイントを解説します。

全員リモート参加でも必要な「開催場所」の書き方

役員全員がそれぞれの自宅やオフィスからWeb会議に参加する場合でも、議事録には実際に存在する場所を記載しなければなりません。オンラインだけで完結させ、場所を特定しないという運用は認められていないためです。実務上は、議長が実際にいる場所(本社会議室や議長の自宅など)を開催場所として記載するのが一般的です。

「誰が・どこから・どの方法で」参加したかの書き方

出席者の欄には、単に出席と書くのではなく、具体的な出席方法を併記します。どの役員がどのようなシステム(ZoomやTeamsなど)を利用したかを明記しましょう。参加場所については、番地までの詳細な住所は不要とされており、プライバシーに配慮して「自宅」といった表現にとどめる運用が一般的です。

冒頭と閉会時に入れておきたい確認の一文

議事録の冒頭には、議長が「出席者が一堂に会するのと同等に、意見表明ができる状態であること」を確認した旨を記載します。閉会時には「終始異状なく審議を終了した」という一文を添えましょう。この2つの表現は、リモート開催時の議事録における定型的な記載として広く使われています。

【そのまま使える】Web会議議事録の記載サンプル

以下は、役員全員がリモート参加した場合の記載例です。

項目 記載内容の例
開催場所 当会社本店会議室(議長の所在場所)
出席方法 取締役〇名は、Web会議システム「Zoom」により出席した
開会の記載 議長は、Web会議システムにより、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明ができる状態であることを確認し、開会を宣言した
閉会の記載 本日のWeb会議システムを用いた取締役会は、終始異状なく審議を終了したので、議長は〇時〇分閉会を宣言した

取締役会の議事録には「書面決議」という選択肢もある

リモート開催のほかにも、会議自体を開かずに決議をしたとみなす「書面決議」という方法があります。ここでは、書面決議の仕組みと、議事録に書くべき事項を紹介します。

書面決議(みなし決議)とは何か

書面決議とは、あらかじめ定款に定めておくことで、取締役全員が書面や電子メールなどで提案に同意した場合に、決議があったものとみなす制度です。会社法第370条に基づく制度で、実務上は「みなし決議」と呼ばれます。なお、監査役を設置している会社では、監査役がその提案に異議を述べていないことも要件となります。

書面決議の場合に議事録へ書くべき事項

書面決議を行った場合も議事録の作成は必要ですが、記載事項は通常と異なります。会社法施行規則第101条第4項第1号により、決議があったとみなされた事項の内容、提案をした取締役の氏名、決議があったとみなされた日、議事録作成に関わった取締役の氏名の4項目を記載します。通常の議事録にある「開催場所」や「議事の経過」を記す必要はありません。

リモート開催と書面決議、どちらを選ぶべきか

議論を交わす必要がある議案は、リアルタイムで意見交換できるリモート開催が適しています一方、事務的な決定には、所定の要件を満たす書面決議を利用できます。決議を要しない定型的な報告には、取締役全員(監査役設置会社では取締役・監査役全員)に報告事項を通知し、所定の議事録を作成する「報告の省略」(会社法第372条)を利用できます。

ただし、代表取締役などによる3か月に1回以上の職務執行状況報告は、書面決議や報告省略の手続きでは代替できず、リモート開催を含む実際の取締役会で行う必要があります。

なぜ取締役会は「ペーパーレスにできない」のか?3つの壁

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多くの企業がDXを進める中、取締役会のペーパーレス化だけが後回しになりがちです。ここでは、電子化を阻む代表的な3つの壁を整理します。

定款や社内規程に残る「押印」の縛り

最初の壁は、定款や取締役会規程に「署名または記名押印」が厳格に定められたままになっている点です。電子署名が普及する前に作られた規程では、紙への押印が前提となっていることが多く、そのままでは電子化に踏み切れません。まずは規程を「署名、記名押印または電子署名」という形に見直すことが第一歩です。

監査役が電子署名に抱きやすい懸念

監査役や監査等委員からは「クラウド型の電子署名で、本人が署名したことを本当に証明できるのか」という懸念が寄せられることがあります。押印であれば印鑑の管理体制が本人性を裏付けますが、電子署名では別の裏付けが必要になるためです。この懸念には、後述する政府見解の内容を丁寧に説明し、監査役の理解を得ることが大切です。

電子署名の有効性と登記時の制限

以前は、各役員が個別に電子証明書を取得する方式でなければ電子署名として認められないと考えられていました。しかし2020年、政府はクラウド上でサービス事業者が署名を行う立会人型の電子署名についても、一定の条件を満たせば有効と扱えるという見解を示しています。ただし、代表取締役の選定など登記を伴う決議については、商業登記に対応した電子証明書など、使用できる署名の種類に制限がある点に注意が必要です。

参考:デジタル庁「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/517ca59b-6ea4-4179-a338-8d1b51a4d40b/20210901_digitalsign_qa_01.pdf

紙運用の限界を突破し、取締役会DXを進める3つのステップ

物理的な書類の回覧や押印集めには、多くの時間とコストがかかります。特に海外に住む社外取締役がいる場合、議事録の完成までに1か月以上かかることも珍しくありません。ここでは、紙運用の限界を超えるための3つのステップを紹介します。

招集から署名までを一元管理し、事務局の手間を減らす

招集通知の作成から資料の共有、議事録の回覧・署名までを1つのプラットフォームで管理できれば、事務局の定型業務は大幅に減らせます。メールの誤送信や資料の差し替え漏れといったリスクも抑えられ、空いた時間をアジェンダの設計に充てられるようになります。取締役会DXプラットフォーム「michibiku」では、こうした一連の業務を一元的に管理できます。

AIで議論の中身を見える化し、実効性評価に活かす

単に作業を効率化するだけでなく、AIを使って議論の傾向や発言量を数値化することも重要です。中長期的な戦略議論にどれだけ時間を割けているかをデータで示せれば、マンネリ化しがちな実効性評価にも客観的な根拠を持たせられます。michibikuのAI議事録機能は、こうした議論の可視化にも対応しています。

複数の会議体をまとめて運営し、ガバナンスを底上げする

指名委員会や報酬委員会といった任意の委員会を含め、複数の会議体を1つのプラットフォームで統合的に運営すれば、情報の透明性が高まります。関連サービスの「conkan」などと組み合わせることで、内部統制まで含めたガバナンス全体を高度化することも可能です。こうした取り組みは、投資家との対話の質を上げることにもつながります。

まとめ:型を押さえれば、リモート議事録も電子化も怖くない

取締役会のリモート開催や議事録の電子化は、会社法上のルールと実務の型さえ押さえれば、決して難しいものではありません。むしろ、紙運用に潜む回覧の遅さや紛失リスクこそが、現代のガバナンスにおける課題といえます。

開催場所の書き方や、出席者同士が即時かつ双方向に意見交換できる状態を確認する記載など、本記事で紹介した型を実践すれば、法的な安全性を保ちながら業務を効率化できます。監査役の懸念には政府見解を示して丁寧に説明し、理解を得ることも大切です。事務局が定型業務から解放され、議論の質を高めるパートナーへと進化することは、企業のガバナンス強化にも直結します。