コーポレートガバナンス報告書の記載要領|書き方・提出期限と実効性評価の開示例

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コーポレートガバナンス報告書の記載要領|書き方・提出期限と実効性評価の開示例

コーポレートガバナンス報告書(CG報告書)は、上場企業が自社のガバナンス体制をステークホルダーに説明するための重要な開示書類です。近年のコーポレートガバナンス・コード改訂により、「記載要領のどこが変わったのか」「実効性評価の結果をどう開示すれば形骸化を防げるのか」という高度な判断が事務局に求められています。

本記事では、東証の最新記載要領に基づき、各項目の書き方・提出期限・実効性評価の開示例を実務に即して解説します。

コーポレートガバナンス報告書とは——提出義務・閲覧方法・最新の改定を整理する

CG報告書は、東証の上場規程により作成が義務付けられている開示書類です。コーポレートガバナンス・コード(CGコード)の各原則に対する実施状況を、東証の記載要領に従って記述する必要があります。まず基本的な仕組みと、最新の改定状況を把握しておきましょう。

どの企業が提出義務を負うのか——市場区分とコンプライ・オア・エクスプレインの基本

東証に上場するすべての企業はCG報告書の提出が義務付けられていますが、CGコードが適用される範囲は市場区分によって異なります。

市場区分 適用されるコードの範囲
プライム市場 基本原則・原則・補充原則(全原則)
スタンダード市場 基本原則・原則・補充原則(全原則)
グロース市場 基本原則のみ

「コンプライ・オア・エクスプレイン」とは、各原則を実施(コンプライ)するか、実施しない場合にその理由を説明(エクスプレイン)する仕組みです。単に「検討中」と記載するだけでは不十分で、自社の業種・規模・経営環境といった個別事情を踏まえ、代替手段でどのように原則の趣旨を補っているかを論理的に説明することが求められます。

参考:東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/

東証のシステムで提出・開示される仕組みと閲覧・検索方法

CG報告書の作成・提出は、東証が運営する「TDnet(適時開示情報伝達システム)」を通じてオンラインで行います。提出された報告書は即時に公開され、投資家をはじめとする一般のステークホルダーが閲覧できる状態になります。

他社の報告書を参照したい場合は、JPXが提供する「コーポレート・ガバナンス情報サービス」が便利です。銘柄名や証券コードで検索でき、最新の報告書だけでなく過去の開示状況も確認できます。報告書の作成画面の項目番号と記載要領の番号が対応しているため、照らし合わせながら作業を進めることで記載漏れを防げます。

記載要領は頻繁に改定される——最新版を必ず確認すべき理由と入手方法

記載要領は社会情勢や制度改正に合わせて定期的にアップデートされます。直近では以下のような変更が行われています。

  • 2025年7月:IR体制の整備義務化に伴う改定
  • 2025年5月:「資本コストや株価を意識した経営」の入力項目の新設
  • 2024年4月:「買収防衛策」から「買収への対応方針」への用語見直し

さらに2026年のCGコード改訂に対応した記載要領の改定も予定されています。古い要領に基づいた記載は形式的な不備を指摘されるリスクがあるため、必ず最新版をJPXの公式サイトからダウンロードして使用してください。

参考:日本取引所グループ「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領」https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008j85-att/um3qrc000001qg1z.pdf

東証の記載要領に沿った5つの構成項目と書き方のポイント

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CG報告書は5つの項目(項目Ⅰ〜Ⅴ)で構成されており、それぞれに記載すべき内容と注意点があります。報告書作成画面の入力フォームと記載要領の番号が対応しているため、番号を確認しながら記述を進めることがポイントです。形式的な記載では投資家の信頼を得られないため、各項目の趣旨を理解したうえで自社の実態を具体的に示しましょう。

【項目Ⅰ】基本的な考え方・資本構成——ガバナンス方針を具体的に示す

項目Ⅰでは、会社のガバナンスに対する基本方針と資本構成を記載します。基本方針は「コーポレートガバナンスの充実に努める」といった抽象的な表現にとどまらず、自社の事業特性や経営課題と結びつけた具体的な記載が求められます。

CGコードの原則3-1(ii)に基づくガバナンスの基本的な考え方と基本方針は、この項目で開示することが一般的です。株主その他ステークホルダーの位置づけや経営監視機能に対する考え方を明確に示しましょう。資本構成の欄では外国人株式所有比率や大株主の状況を直近の株主名簿に基づいて正確に記載します。支配株主や親会社が存在する場合は、少数株主保護の方策についても記述が必要です。

【項目Ⅱ】経営管理組織——社外取締役の選任理由と独立性の記載方法

項目Ⅱは、取締役会の構成・社外取締役の選任状況など、ガバナンスの骨格を示す重要なセクションです。社外取締役については、「豊富な経験を有するため」といった汎用的な表現を避け、その方の具体的な専門性と自社の経営課題との関係を明示することが重要です。

独立役員として指定する場合は、東証が定める独立性基準を満たしていることを示したうえで、会社独自の判断基準についても触れることが望まれます。代表取締役社長等を退任した相談役・顧問等がいる場合は、業務内容や報酬の有無を詳細に開示し、透明性を確保しましょう。指名・報酬委員会を設置している場合は、委員会の構成・権限・活動状況も記載対象です。

【項目Ⅲ〜Ⅴ】施策の実施状況・内部統制・買収対応方針の記載のコツ

項目Ⅲでは、株主総会の活性化策・IR活動の状況・サステナビリティへの取り組みを記載します。補充原則2-4①(中核人材の多様性確保)や補充原則3-1③(人的資本・知的財産への投資)はここに含まれます。2025年7月の改定でIR体制の整備が義務化されたため、IR担当者の配置や情報提供の仕組みを具体的に記載してください。

項目Ⅳでは内部統制システムの基本的な考え方と整備状況、項目Ⅴでは買収への対応方針を記載します。内部統制については「規程を策定した」と述べるだけでなく、設計通りに運用され成果を上げているかを検証できる仕組みにも言及しましょう。数値目標の進捗状況を示すことで、開示の説得力が高まります。

ひな形の活用と「コンプライ・オア・エクスプレイン」で差がつく書き方

JPXが提供するひな形(Wordファイル)は作成の出発点として有効ですが、他社の表現をそのまま流用することは避けましょう。投資家は、その会社独自の言葉で語られるガバナンスの姿勢を評価するためです。

「エクスプレイン」の記述で差がつくポイントは以下のとおりです。

  • 自社の業種・規模・経営環境という「個別事情」を具体的に示す
  • 代替手段でどのように原則の趣旨を補っているかを論理的に説明する
  • 将来に向けた具体的な検討状況やスケジュールを明記する
  • 「現在は実施していないが、○年度中に導入を検討している」など時間軸を示す

「検討中」の一言で済ませるのではなく、こうした記述が建設的な対話のきっかけをつくります。

参考:金融庁「記述情報の開示の好事例集2024」https://www.fsa.go.jp/news/r6/singi/20250324-2.html

コーポレートガバナンス報告書の提出時期・期限と更新タイミング

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CG報告書の提出は、定時株主総会に合わせた「定期更新」と、重大な変更が生じた際の「随時更新」の2種類があります。期限を過ぎると上場規程違反として公表措置などの対象となるリスクがあります。自社の決算期に合わせたスケジュール管理を徹底しましょう。

定時株主総会に合わせた「定期更新」の期限と提出フロー

CG報告書の定期更新は、定時株主総会の招集通知発送日から株主総会開催日までの間に行うことが原則です。総会で役員人事が承認された後は速やかに内容を確定させて再提出する流れが一般的になっています。

3月期決算企業の場合、6月の株主総会後が事務局にとって最大の繁忙期です。招集通知の内容とCG報告書の記載に齟齬が出ないよう、法務・広報部門と緊密に連携して作業を進めましょう。提出後は「コーポレート・ガバナンス情報サービス」で正しく公開されているかを確認してください。

基本的な提出フローは以下のとおりです。

  1. 最新の記載要領をJPXの公式サイトから入手する
  2. TDnetの作成画面で前回提出分を呼び出し、変更箇所を更新する
  3. 社内の確認・承認プロセスを経て期限内に提出する
  4. 提出後、コーポレート・ガバナンス情報サービスで公開状況を確認する

代表取締役交代・商号変更など「随時更新」が必要なケースと対応方法

定期更新以外でも、記載内容に重要な変更が生じた場合はその都度「随時更新」を行う必要があります。随時更新が必要な主なケースと対応方針を以下に整理します。

変更の種類 対応方針
代表取締役の交代 速やかに更新が必要
商号変更・本店移転 速やかに更新が必要
資本構成の著しい変化 速やかに更新が必要
CGコード各原則の実施状況変更 次回の定時株主総会後に一括更新も可

どの項目が即時更新対象で、どれが総会後の一括更新で対応できるかを記載要領で事前に確認しておくことが大切です。変更が生じた際に慌てないよう、判断基準を社内で共有しておきましょう。

2026年改訂コード対応版の提出期限——2027年7月末日までに必要な対応

2026年のCGコード改訂(2021年6月以来5年ぶり)に伴い、改訂後のコードに基づいたCG報告書の提出が必要になります。提出期限は、遅くとも2027年7月末日が目安となります。改訂の確定・適用状況については、金融庁・JPXの公式サイトで最新情報をご確認ください。

2021年6月の前回改訂時は、改訂後に半年から1年程度の対応期間が設けられました。2026年改訂も同様に一定の対応期間が見込まれますが、改訂内容の早期把握と対応方針の検討を早めに進めておくことが重要です。投資家は提出期限を待たずに早期対応を期待しているため、任意開示などを活用して姿勢を示すことも有効な選択肢です。

参考:金融庁「CGコード改訂案の公表について」https://www.fsa.go.jp/news/r7/singi/20260410.html

実効性評価(原則4-11③)の開示をどう書くか——形骸化しない3つのポイント

補充原則4-11③に基づく「取締役会全体の実効性に関する分析・評価の結果」の開示は、多くの事務局が苦慮する項目のひとつです。投資家は形骸化した報告ではなく、取締役会の議論がどのように質的に向上したかという実態を求めています。形骸化を防ぐ3つのポイントを解説します。

「評価を実施した」だけでは不十分——手法・課題・改善策の3点セットで記載する

実効性評価の開示で「取締役会全体の実効性について評価を行いました」と一文で終わらせる記載は不十分です。投資家が求めているのは評価の実態と改善への取り組みであり、以下の3点をセットで記載することが推奨されます。

  • 評価の手法:アンケートか個別インタビューか、第三者機関を活用したかどうか
  • 抽出された課題:評価を通じて明らかになった具体的な問題点や改善余地
  • 今後の改善策:課題に対してどのような対応を講じるか、いつまでに取り組むか

この3点がセットで記載されることで、評価が形式的なものではなくガバナンス改善のサイクルに組み込まれていることが伝わります。「実行計画」まで踏み込んで記載することが、投資家からの信頼獲得につながります。

参考:PwC「取締役会の実効性評価における第三者利用の類型」https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/corporate-governance/vol28.html

スコアの高止まりと「毎年同じ文言」が投資家の信頼を損なうリスク

実効性評価のスコアが毎年高水準を維持し、開示文言も前年とほぼ変わらない——こうした「形骸化した開示」は、機関投資家から厳しく評価される傾向があります。ガバナンス体制の進化が止まっている、あるいは評価自体が形式的であるというメッセージを投資家に与えかねないためです。

形骸化しやすいパターンとして以下が挙げられます。

  • 「概ね適切に機能していると評価されました」で終わる定型文
  • 課題として挙げた項目が前年と同一のまま改善状況が記載されていない
  • 他社と比較した分析がなく、自社評価だけで完結している

スコアに一喜一憂するのではなく、アンケートの自由記述やインタビューから得られた「生の声」を重視しましょう。スコアが高くても、さらなる高みを目指すための課題をあえて抽出する姿勢が重要です。

前年の課題への進捗と議論の質の変化を示す具体的な記述例

開示の質を高めるには、前年度に特定した課題への進捗を明記することが効果的です。時間軸に沿った記述は投資家に説得力を持って伝わります。

改善前の記載例(形骸化しやすいパターン)
「取締役会の実効性については概ね適切と評価されました。引き続き議論の活性化に取り組みます。」

改善後の記載例(実質的な開示)
「前年度に課題として挙げた『中長期戦略に関する議論時間の不足』について、今期は議題設定を見直し、戦略議題への配分を全体の30%以上に拡大しました。社外取締役からは『論点が絞られ発言しやすくなった』との評価を得ており、次年度は事業ポートフォリオの見直しに関する議論をさらに深める方針です。」

課題・施策・効果・次期の方針という流れで記載することで、PDCAが機能していることを具体的に示すことができます。社外取締役からの指摘によって議論がどう深まったかという定性的な変化を盛り込むことも有効です。

実質的な開示を支援する「michibiku」——評価・比較・記録を一気通貫で

CG報告書の記載の質を高めるには、実効性評価の結果を正確に把握し、他社と比較しながら課題を客観的に分析できる環境が必要です。しかし、日々の事務局業務に追われていると、開示の実質化に注力する余裕が生まれにくいのが現実です。取締役会DXプラットフォーム「michibiku」は、評価から記録・開示準備までを一気通貫で支援します。

実効性評価アンケートの集計・可視化・他社比較をシステムで完結させる

michibikuには、実効性評価アンケートの作成・配信・集計・可視化・他社スコアとの比較分析機能が備わっています。テンプレートを活用することで設問作成の手間を省けるだけでなく、結果がリアルタイムでグラフ化されるため、役員全員が同じデータを見ながら議論できます。

他社スコアとの比較機能を活用することで、「自社の評価が業界平均と比べてどの水準にあるか」を客観的に把握できます。開示文書に根拠のある比較データを盛り込めるため、投資家への説得力が高まります。自社内だけの評価に閉じず、外部視点を取り込んだPDCAサイクルを回すことが可能です。

AI議事録要約で取締役会の議論を正確に記録し、開示の根拠データを蓄積する

CG報告書で「取締役会における議論の質の変化」を示すためには、過去の議論内容を正確に記録・蓄積しておくことが前提になります。michibikuのAI議事録要約機能を活用すれば、会議中の発言が文字起こしされ、議題ごとの議論の要旨が短時間でまとまります。また、会議分析機能では、どんなテーマにどのくらいの時間が使えているのか、時間の使い方の内訳として、「説明」「意見」「質疑応答」「議論」の割合はどうなっているのかなども可視化することができます。

蓄積されたデータは、実効性評価の振り返り資料や、開示文書における「議論の変化を示す根拠」として活用できます。「前年と比べて戦略議題への議論時間が増加した」という記載も、データに基づいて客観的に示せるようになります。事務局は記録作業に追われることなく、より本質的なガバナンス戦略の立案に集中できます。

定型業務を削減して報告書作成と本来業務を両立できる時間をつくる

michibikuは、招集通知の発行・資料配布・AI議事録要約・電子署名・保管までをワンプラットフォームで完結させます。導入企業のなかには、取締役会の準備から完了までの時間を従来の3分の1に短縮した事例も報告されています。

定型業務の自動化によって生まれた時間は、実効性の高いCG報告書の作成やガバナンス改革の推進といった、より付加価値の高い本来業務に充てることが可能です。DXツールの活用は単なる効率化を超え、上場企業に求められる高度なガバナンス体制の構築へと直結します。

まとめ——記載要領を押さえた「実質的な開示」が、ガバナンス評価の分岐点になる

コーポレートガバナンス報告書は、最新の記載要領を遵守するだけの形式的な文書ではありません。自社のガバナンスがどう進化しているかを投資家に示す「対話のツール」であり、企業価値を左右する重要な情報源です。

提出期限の管理・各項目の具体的な記載・実効性評価のPDCAを開示に反映させることが、投資家の信頼を得る鍵になります。2026年のCGコード改訂後は2027年7月末日までに対応版の提出が必要です。形骸化した開示を脱却し、根拠のある実質的な記載への切り替えが、ガバナンス評価の分岐点になります。