2026.10.29
取締役会議事録における会社法の要件!法定記載事項と作成の注意
取締役会が終わった直後から、議事録の作成という次の仕事が始まります。録音を聞き返しながら発言を整理し、様式を確認し、出席者の署名を集める。この一連の作業を「どこかに漏れがあるのではないか」という不安を抱えたまま進めている担当者は少なくありません。
不安の正体は、会社法が求める要件が一つの条文にまとまっておらず、本体の条文と施行規則、さらに登記の規則にまで分散していることにあります。本記事では、取締役会議事録について会社法が求める要件を、記載事項・署名義務・備置き義務の3つに整理して解説しましょう。あわせて、要件を満たさなかった場合に生じるリスクと、事務局が毎回回すべき確認フロー、そして作成そのものを効率化する方法まで紹介します。
取締役会議事録の法定記載事項|会社法施行規則が定める8項目
会社法369条3項は、取締役会の議事について議事録を作成しなければならないと定めています。ただし、何を書くべきかという具体的な中身は本体の条文には書かれておらず、会社法施行規則101条3項に委ねられているのです。
つまり、条文を追うだけでは記載事項の全体像がつかめない構造になっているわけです。まずは施行規則が定める8つの項目を確認し、そのうえで実務上つまずきやすい箇所を見ていきましょう。
施行規則が定める8つの記載事項
会社法施行規則101条3項が求める記載事項は、次の8項目に整理できます。
| # | 記載事項 |
|---|---|
| 1 | 取締役会が開催された日時および場所(その場にいない取締役等が出席した場合はその出席方法を含む) |
| 2 | 特別取締役による取締役会であるときは、その旨 |
| 3 | 取締役・株主・監査役等の請求を受けて招集された場合など、招集の経緯に該当事由があるときはその旨 |
| 4 | 議事の経過の要領およびその結果 |
| 5 | 決議事項について特別の利害関係を有する取締役があるときは、その氏名 |
| 6 | 会社法が定める場面で述べられた意見または発言があるときは、その内容の概要 |
| 7 | 取締役会に出席した執行役・会計参与・会計監査人または株主の氏名または名称 |
| 8 | 議長が存するときは、議長の氏名 |
このうち2番と3番は該当する場合のみ記載する項目です。とはいえ、招集権者以外の請求で開いた取締役会でその旨を落とすと、招集手続の適法性を後から説明できなくなります。該当の有無を毎回確認する運用にしておくと安全でしょう。
議事の経過の要領およびその結果|議事録の中核をなす項目
8項目の中心にあるのが4番の「議事の経過の要領及びその結果」です。ここが議事録の本体にあたります。
要領という言葉が示すとおり、求められているのは発言の逐語録ではなく、議論の流れが追える程度の要約です。議案ごとに、提案の内容、審議で出た主要な論点、そして可決・否決という結果が読み取れる状態になっていれば、条文の要求は満たされます。
なお、書面決議によって取締役会の決議があったものとみなされた場合は、通常の議事録とは別の記載事項が施行規則に定められています。書面決議を使う場合は、様式を分けて用意しておきましょう。
見落としやすい「特別利害関係取締役」と「意見・発言の概要」
実務で漏れが起きやすいのが5番と6番です。どちらも「該当する場合に書く」項目であるため、意識していないと素通りしてしまいます。
5番の特別の利害関係を有する取締役は、その議案の決議に参加できません(会社法369条2項)。議事録には氏名を記載し、あわせて審議・議決から外れた事実が分かるように書いておく必要があります。定足数の計算からも除かれるため、記載が欠けると決議の成立要件を後から検証できなくなります。
6番の意見・発言の概要は、競業取引や利益相反取引の報告、監査役が述べた意見などが対象です。とくに監査役から指摘が出た場面でその概要を落とすと、監査機能が働いた記録そのものが残りません。発言があった事実と、その要旨を必ず書き留めてください。
参考:e-Gov法令検索「会社法施行規則」
https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012
出席取締役・監査役の署名義務|会社法369条3項が求めるもの
記載事項を満たしても、それだけでは議事録は完成しません。会社法は、作成した議事録に出席者が署名または記名押印することまでを求めています。
署名を集める作業は、役員のスケジュールに左右されるため事務局の負担が大きい工程です。だからこそ、誰の署名が必要で、どの形式なら認められるのかを正確に押さえておく価値があります。
署名または記名押印が必要になるのは誰か
会社法369条3項は、議事録が書面で作成されているときは、出席した取締役および監査役が署名し、または記名押印しなければならないと定めています。ポイントは対象が「出席した」者に限られる点です。
欠席した取締役や監査役の署名は不要です。一方で、監査役設置会社であれば、出席した監査役の署名も取締役と同じく必要になります。取締役の分だけを集めて完了としてしまう取り違えが起きやすいところなので、出席者名簿と署名欄を突き合わせる手順を挟んでおきましょう。
また、署名とは自署を指し、記名押印は氏名を記載したうえで押印する方式を指します。どちらの方式でもかまいませんが、社内で様式を統一しておくと回収の管理が楽になります。
電磁的記録で作成する場合の電子署名
議事録を電磁的記録で作成する場合、署名や記名押印に代えて電子署名を行うことになります(会社法369条4項)。紙の議事録に押印して回覧する運用でなくても、条文上の要件は満たせるということです。
紙の議事録に押印して回覧する方法は、長く実務の標準として定着してきました。ただし現在の会社法は電磁的記録による作成と電子署名を正面から認めており、紙とハンコでなければならないという制約はありません。押印のために役員を追いかける運用は、法律が求めているというより、各社の慣行として残っているものと言えます。
電子署名として認められる方式には要件があるため、導入にあたっては使用するサービスが会社法の求める水準を満たすかどうかの確認が必要です。
登記の添付書面になる場合の押印要件
もう一つ押さえておきたいのが、議事録が登記の添付書面になる場合です。ここでは会社法とは別に、商業登記規則が押印について独自の要件を定めています。
取締役会の決議で代表取締役を選定した場合、その議事録に押印した出席取締役および監査役の印鑑について、市区町村長が作成した証明書の添付が求められます(商業登記規則61条6項)。いわゆる個人の印鑑証明書です。ただし、変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑を押している場合は、この添付が不要とされています。
代表取締役の交代を伴う取締役会では、通常の署名回収に加えて印鑑証明書の手配が発生します。役員改選の時期には、この段取りを逆算しておかないと登記期限に間に合いません。
参考:e-Gov法令検索「商業登記規則」
https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023
議事録の備置きと保存期間|本店に10年というルール
作成と署名を終えたら、最後に保存の要件が残ります。会社法は議事録を「作って終わり」にすることを認めておらず、一定期間の備置きを義務づけているのです。
保存は地味な工程ですが、株主や債権者から閲覧を求められる可能性がある以上、いつでも取り出せる状態を保つ責任が事務局にあります。
取締役会の日から10年間、本店に備え置く
会社法371条1項は、取締役会設置会社に対して、取締役会の日から10年間、議事録を本店に備え置くよう義務づけています。起算点は取締役会の開催日です。
10年という期間は、役員の在任期間をまたぐ長さになります。担当者が何度か交代しても保存の連続性が途切れない管理方法を、あらかじめ決めておく必要があるでしょう。
なお、株主総会議事録には支店にも写しを備え置く規定がありますが、取締役会議事録についてそのような定めはありません。本店での備置きが要件だと押さえておいてください。
書面決議でみなし決議とした場合も同じ扱い
定款に決議を省略できる旨の定めがある場合には、取締役の提案に対し、その事項について議決に加わることができる取締役全員が書面または電磁的記録で同意することで、取締役会の決議があったものとみなすことができます。ただし、監査役設置会社では、監査役がその提案に異議を述べていないことも必要です(会社法370条)。この場合も、同意の意思表示を記載した書面等について10年間の備置き義務がかかります。
会議を開いていないため議事録という意識が薄れがちですが、備置きの対象からは外れません。書面決議を多用している会社ほど、書類の所在が散らばりやすい点に注意が必要です。
決議の方式にかかわらず、取締役会の意思決定の記録は同じ棚に集約しておく。この単純なルールが、10年後の検索性を左右します。
株主・債権者から閲覧を求められる前提で管理する
備置きが義務づけられている理由は、株主や債権者がその内容を確認できるようにするためです。株主はその権利を行使するため必要があるときに、議事録の閲覧や謄写を請求できます(会社法371条2項)。
つまり議事録は、社内限りの記録ではなく、外部の目にさらされる可能性のある文書です。作成の段階から第三者に読まれることを想定した記述にしておけば、請求を受けた際の対応も落ち着いて進められます。
請求を受けてから慌てて探すような保存状態では、対応そのものが問題になりかねません。所在と検索性を平時から確保しておきましょう。
参考:e-Gov法令検索「会社法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
コンプライアンス違反リスクを防ぐ4つのチェックポイント
ここまで見てきた要件を満たせなかった場合、何が起きるのでしょうか。「不備があっても実害はない」と考えていると、思わぬ形で責任問題に発展します。
議事録の不備が招くリスクは、会社に及ぶものと取締役個人に及ぶものに分かれます。事務局が押さえておくべき4つのチェックポイントとして整理しましょう。
チェック①:記載漏れ・虚偽記載・備置き懈怠には過料が科される
第一に、会社法は議事録に関する義務違反に対して過料を定めています。議事録に記載すべき事項を記載しなかった場合、虚偽の記載をした場合、そして備置きを怠った場合は、100万円以下の過料の対象です(会社法976条)。
過料は刑罰ではないものの、行政上の制裁として実際に科されうるものです。「書き忘れただけ」という認識で済まされる話ではありません。
対象となるのは会社ではなく、義務に違反した取締役等の個人です。この点を社内で共有しておくと、議事録作成に対する温度感が変わってきます。
チェック②:異議をとどめないと決議に賛成したと推定される
事務局が最も重く受け止めるべきなのが、会社法369条5項の規定です。決議に参加した取締役であって議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定されます。
これは、実際には反対していた取締役でも、議事録に異議を残していなければ、賛成したものと推定されるということです。ただし、録音などの別の証拠によって、賛成していなかったことを立証し、この推定を覆すことは可能です。議事録が唯一の証拠になるわけではなく、記載漏れだけで直ちに損害賠償責任が確定するものでもありません。
それでも、異議の記載を欠くと、後日の責任追及に際して立証上の負担が増します。反対や留保の意見が出たときは、誰がどのような趣旨で述べたのか、採決ではどのような意思を示したのかを正確に記録してください。議事録は、審議と決議の経緯を検証するための重要な証拠です。
チェック③:登記申請で受理されないリスク
第三に、議事録が登記の添付書面として使えないケースがあります。代表取締役の選定や本店移転など、取締役会の決議を経て登記する事項は少なくありません。
記載事項に不足があったり、必要な押印や印鑑証明書がそろっていなかったりすると、法務局で補正を求められます。補正の往復が発生すれば、登記の完了は当然遅れます。
役員変更の登記には期限があるため、この遅れは実務上のダメージが大きい部分です。登記に使う議事録は、通常より一段厳しい目で確認しましょう。
チェック④:作成から備置きまでの確認フローを固定する
4つ目は、個別の要件ではなく運用の話です。ここまでの要件は、毎回同じ手順で確認する仕組みに落とし込まなければ、担当者の記憶頼みになります。
最低限、次の順序を固定しておくことをおすすめします。
- 作成:8項目の記載事項をチェックリストで確認し、該当項目の有無を潰す
- 確認:出席者名簿と照合し、特別利害関係取締役や発言者の記載漏れを見る
- 署名:出席した取締役および監査役の署名または記名押印を回収する
- 備置き:本店の保管場所に格納し、10年間の管理台帳に登録する
なお、議事録の記載に不備があったこと自体が、ただちに取締役会決議を無効にするわけではありません。ただし、決議の適法性を争われたときに会社側の説明材料が失われるという意味で、不備は確実に不利に働きます。
AI活用で適法かつ効率的に議事録を作成・管理する
要件を理解し、確認フローを決めても、それを毎月手作業で回し続けるのは容易ではありません。録音の聞き返しに1時間以上を要し、そこから様式を整え、押印を追いかける。この繰り返しが事務局の残業を生んでいます。
適法性と効率は、本来トレードオフではありません。要件をシステム側に持たせてしまえば、正確さを上げながら時間を減らすことが可能です。
AI要約で「議事の経過の要領」の作成時間を圧縮する
最も時間を奪っているのが、議事の経過の要領をまとめる工程です。ここにAIの音声認識と要約を組み合わせると、担当者の作業は文章を一から書き起こすことから、生成された要約を確認・修正することへ変わります。
発言者を識別したうえで議論の流れを整理できるため、誰がどの論点でどう述べたかという構造が保たれます。異議や反対意見の記録漏れという先ほどのリスクに対しても、有効な防波堤になるでしょう。
議事録作成が数時間の仕事から数十分の仕事へ変われば、事務局は議案の精査という本来の役割に時間を戻せます。
テンプレート化で法定記載事項の漏れを構造的に防ぐ
もう一つの効果が、記載事項の入力漏れを構造的に防げることです。8項目を埋めなければ次に進めない様式をシステム上に用意しておけば、確認は担当者の注意力に依存しなくなります。
特別利害関係取締役の有無、招集の経緯、議長の氏名といった該当時のみ記載する項目も、選択式で必ず問われる形にできます。チェックリストを紙で運用するより、入力の段階で強制するほうが確実です。
要件を知っている人だけが正しく作れる状態から、誰が担当しても同じ品質になる状態へ。標準化がもたらす価値はここにあります。
「michibiku」で作成から電子署名・10年保管までを一つのシステムに
取締役会DXプラットフォーム「michibiku」は、議事録の作成、電子署名による承認、そして保管までを一つのシステム上で完結させます。AIによる議事録要約機能を備えており、作成工程そのものを短縮できる点が特徴です。
電子署名に対応しているため、押印のために役員を追いかける必要がありません。作成したデータはそのまま保管され、10年間の備置き義務に対しても検索可能な状態で応えられます。上場企業を中心とした導入実績があり、ガバナンス水準の高い運営が求められる会社ほど効果を実感しやすい設計です。
適法性を担保しながら作成負担を減らす。取締役会に特化したプラットフォームが担うのは、まさにこの両立です。
まとめ:会社法の要件を仕組みに落とし、議事録作成の不安をなくす
取締役会議事録に会社法が求める要件は、大きく3つに整理できます。会社法施行規則101条3項が定める8項目の記載事項、出席した取締役および監査役による署名または記名押印(会社法369条3項)、そして取締役会の日から10年間の本店備置き(同371条1項)です。要件が複数の法令に分散しているため、一枚にまとめて把握しておくことが漏れを防ぐ第一歩になります。
そして不備が生じた場合のリスクは、会社にも取締役個人にも及ぶのです。記載漏れや備置き懈怠には過料が科され、議事録に異議をとどめなかった取締役は決議に賛成したものと推定されます。登記の添付書面として使えなければ、役員変更の手続そのものが滞ります。議事録は単なる社内記録ではなく、取締役会の意思決定が適法に行われたことを示す客観的な証拠です。
「michibiku」は、AI要約による作成時間の短縮、法定記載事項を埋め込んだテンプレート、電子署名、そして10年保管までを一つのシステムでつなぎます。要件を担当者の記憶ではなく仕組みに持たせることで、適法性と効率を同時に高められます。
議事録の作成に毎回プレッシャーを感じている法務・総務のご担当者様は、ぜひ一度「michibiku」の資料請求やお問い合わせをご検討ください。





