2026.10.29
取締役会と役員会の違いとは?法定機関と任意機関の権限と役割
同じ議案が経営会議で議論され、その後の取締役会でもう一度説明される。二度の会議を経てようやく実行に移るころには、意思決定に何週間もかかっている。会議体が複数ある会社では、こうした二重審議が常態化していることがあります。
重複の原因は、それぞれの会議体が何を決める場なのかが整理されていない点にあります。取締役会は会社法が定める法定機関ですが、役員会や経営会議は法律に定義のない任意の会議体です。この性質の違いを踏まえないまま運用すると、役割が重なり、どちらで決めたのかも曖昧になります。本記事では両者の違いを法的拘束力・権限・メンバーの3つの軸で整理し、会議体を切り分ける具体的な基準までを解説します。
「役員会」とは何か|会社法に定義のない呼称
まず確認しておきたいのが、「役員会」という言葉の位置づけです。取締役会と並べて語られることが多いものの、両者は法律上まったく別の性質を持っています。
そもそも役員会とは何を指すのか。呼称の実態から見ていきましょう。
役員会は法律用語ではなく、各社が任意に設けた会議体
結論から言えば、役員会という会議体は会社法に規定がありません。条文を探しても定義は見つからないのです。
つまり「役員会」は会社法で定義された機関名ではありません。ただし、実務では取締役会を含む呼称として使われることもあり、名称だけで任意の会議体とは判断できません。本記事では、取締役会とは別に各社が任意に設ける経営会議等を「役員会」として扱います。その設置・構成・役割は、法令上の権限分配に反しない範囲で各社が定めます。
法定機関である取締役会とは、この点で出発点から異なります。取締役会は会社法362条以下に権限と手続が定められた機関であり、設置した以上は法律の要求に従って運営しなければなりません。
経営会議・常務会・執行役員会など、呼び名は会社によって異なる
任意の会議体は、会社によってさまざまな名前で呼ばれています。経営会議、常務会、執行役員会、経営委員会。いずれも実質的には同種の会議体を指しています。
名前が違うだけで機能は共通しており、多くの場合は業務執行に関する意思決定や情報共有の場として機能しています。取締役会に上げる前の検討の場として位置づけている会社もあるでしょう。
したがって、他社の運営を参考にする際は名称ではなく中身を見る必要があります。同じ「経営会議」でも、会社によって扱う議題も参加者も異なるためです。
「執行役員」と「執行役」は別のもの
会議体のメンバーを語るうえで、押さえておきたい用語の区別があります。執行役員と執行役は、名前が似ていますがまったく別の存在です。
執行役員は、会社法上の機関ではありません。業務執行の責任者として社内で任命される立場であり、法的には従業員か、会社と委任契約を結んだ者にあたります。取締役ではないため、執行役員という肩書きだけで取締役会の構成員になるわけではありません。(ただし、取締役が執行役員を兼務することは可能であり、その場合は取締役として取締役会の構成員となります。)
一方の執行役は、指名委員会等設置会社に置かれる会社法上の機関です(会社法402条)。取締役会によって選任され、委任を受けた業務執行の決定を行います。両者を混同すると、誰にどこまでの権限があるのかという議論が根本から狂うため、社内で用語を統一しておきましょう。
参考:e-Gov法令検索「会社法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
取締役会と役員会の違い|法的拘束力・権限・メンバーの3つの軸
役員会が任意の会議体であることを確認したところで、取締役会との違いを具体的に整理します。3つの軸で並べると、両者の性質の差がはっきりします。
| 軸 | 取締役会 | 役員会・経営会議など |
|---|---|---|
| 位置づけ | 会社法が定める法定機関 | 各社が任意に設ける会議体 |
| 決定の効力 | 会社法上の決議として効力を持つ | 社内的な合意にとどまる |
| 議事録 | 作成と10年間の備置きが義務 | 法律上の義務はない |
| メンバー | 取締役(監査役等も出席) | 執行役員や部門長を含む場合がある |
法的拘束力の違い|決議に会社法上の効力があるかどうか
最も重要な違いが、決定の効力です。取締役会で決議した事項は、会社法上の取締役会決議として効力を持ちます。代表取締役の選定や、取締役会に決定権限が留保される重要な財産の処分の承認などは、原則として取締役会決議によって行います。(ただし、非公開の取締役会設置会社では、定款に基づき株主総会でも代表取締役を選定できる場合があります。また、重要な業務執行の決定については、後述のとおり、機関設計や法定要件に応じて取締役または執行役に委任できる場合があります。)
これに対し、任意の会議体でどれだけ真剣に議論し、全会一致で結論を出したとしても、それは社内的な合意にとどまります。会社法上の取締役会決議として扱われることはありません。
この違いは、議事録の扱いにも表れます。取締役会議事録には作成義務があり、取締役会の日から10年間の備置きが求められます(会社法369条3項、371条1項)。任意の会議体にはこうした義務がなく、記録の残し方も各社の運用次第です。
権限の違い|法定の決議事項を持つかどうか
2つ目が権限の範囲です。取締役会は会社法によって決議事項が定められており、重要な業務執行の決定を個々の取締役に委ねることが禁じられています(会社法362条4項)。法律が取締役会に留保している領域があるということです。
任意の会議体には、法律が与えた権限がありません。何を扱うかは社内規程や慣行によって決まります。したがって権限の範囲も、会社が定めた枠内にとどまるのです。
言い換えれば、取締役会の権限は法律が支えているのに対し、任意の会議体の権限は社内ルールが支えています。ルールを変えれば範囲も変わるという可変性が、任意機関の特徴です。
メンバーの違い|誰が参加しているか
3つ目がメンバー構成です。取締役会の構成員は取締役であり、監査役設置会社では監査役が出席し、必要に応じて意見を述べます。社外取締役も当然に構成員です。
一方、任意の会議体には社外取締役が入らないことが多く、代わりに執行役員や主要部門の責任者が参加している例が目立ちます。業務執行を担う人が集まる、実務寄りの構成になりやすいわけです。その意味で、任意の会議体は実質的な執行機関として機能していると言えます。
この構成の違いが、議論の性格を分けます。取締役会は監督の視点が入る場であり、任意の会議体は執行の当事者が集まる場です。同じ議案でも、問われる論点はおのずと変わってきます。
なぜ二重審議が起きるのか|重複を生む3つの構造
性質が異なる会議体であるにもかかわらず、実務では同じ議案が両方にかかる場面が頻繁に生じています。事務局にとっては資料の準備が二重になり、役員にとっては同じ説明を二度聞かされることになるのです。
なぜ重複が起きるのか。構造的な原因を3つに整理します。
構造①:役割分担が規程に落ちていない
第一の原因は、それぞれの会議体が何を扱うのかが文書化されていないことです。取締役会規程は整備されていても、経営会議の運営規程がない、あるいはあっても扱う議題の範囲が書かれていない会社は少なくありません。
範囲が定まっていなければ、どちらにも関係しそうな議案は両方にかかります。念のため両方で説明しておこう、という判断が積み重なった結果が二重審議です。
しかもこの状態は、担当者の善意から生まれています。抜け漏れを防ごうとする姿勢が、そのまま重複を生んでいるわけです。だからこそ、個人の判断ではなく規程で解決する必要があります。
構造②:どちらで決めたのかが曖昧なまま実行される
第二の原因が、決定の所在が不明確なまま案件が進むことです。経営会議で方向性が固まり、取締役会でも異論が出なかった。その後に振り返ったとき、正式な決定がどちらの場でなされたのかを誰も説明できない状態になります。
この曖昧さは、平時には表面化しません。しかし後から決定の適法性が問われる場面では、深刻な問題になります。取締役会の決議が必要な事項について、議事録に決議の記録が残っていなければ、決議を経ていないと評価されるおそれがあるためです。
二重審議は、単に時間が無駄になるという話にとどまりません。決定の所在を曖昧にするという点で、意思決定プロセスの信頼性そのものに関わります。
構造③:参加者が重なり、同じ顔ぶれで二度議論している
3つ目に挙げたいのが、メンバーの重複です。経営会議に出席している取締役が、そのまま取締役会にも出席している。この構成は多くの会社で見られます。
同じ人が同じ議案を二度扱えば、二度目の議論は前回の確認になりがちです。すでに結論が見えている状態で形式的に議事を進めることになり、取締役会が承認の場に変質していきます。
もっとも、参加者が重なること自体は避けられません。問題は人の重複ではなく、扱う論点まで重複していることです。同じ顔ぶれであっても、執行の立場で議論する場と監督の立場で議論する場は切り分けられます。
会議体を切り分ける3つの基準
では、どのように切り分ければよいのでしょうか。ここでは、規程に落とし込むための3つの基準を示します。この順序で当てはめれば、多くの議案は自動的に振り分けられます。
抽象的な原則ではなく、条文に根拠を持つ基準から順に確認していきましょう。
基準①:法定の決議事項は取締役会でしか決められない
出発点は、動かせない線を確認することです。会社法が取締役会の決議事項と定めている事項は、任意の会議体で決めることができません。ここは選択の余地がない領域です。
重要な財産の処分および譲受け、多額の借財、支配人その他の重要な使用人の選任および解任、内部統制システムの整備などがこれにあたります(会社法362条4項)。代表取締役の選定および解職も同様です。
これらを経営会議で決めたとしても、会社法上は決議を経ていないことになります。実行に移した後で手続の効力を争われるリスクを抱えることになるため、まずこの線を関係者全員で共有しておきましょう。
基準②:会議体そのものに「委任」することはできない
見落とされやすいのが、委任の仕組みです。監査等委員会設置会社では、取締役の過半数が社外取締役である場合などに重要な業務執行の決定を広く委ねられます(会社法399条の13第5項・6項)。指名委員会等設置会社でも、同様の委任が原則として認められています(同416条4項)。
ここで注意したいのは、条文が委任先として定めているのが「取締役」または「執行役」という個人だという点です。経営会議や役員会という会議体に委任するという仕組みは、会社法に存在しません。
会社法上の委任先を取締役または執行役とすることと、社内規程に基づいて経営会議を意思決定の場とすることは両立します。実務上の「経営会議への権限委譲」については、法令上の委任関係と社内の決裁手続を区別して整理します。規程では、委任を受ける取締役・執行役とその権限の範囲、会議体の審議・決定方法、責任の所在を明確にしておきましょう。
基準③:任意の会議体は「取締役会に上げる前の場」と位置づける
3つ目は運用上の設計です。法定事項は取締役会、それ以外は執行に委ねるという線を引いたうえで、任意の会議体の役割を明確にします。
実務的に有効なのは、任意の会議体を取締役会に上げる前の検討の場と位置づける方法です。論点を整理し、資料の粒度をそろえ、争点を明確にしたうえで取締役会に上程する。この役割分担であれば、二重審議ではなく段階的な準備になります。
重要なのは、同じ議論を二度行わないことです。経営会議では執行の観点から実行可能性を詰め、取締役会では監督の観点から妥当性を問う。扱う論点を意識的に変えることで、重複は解消されます。
参考:e-Gov法令検索「会社法」https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_399_13
各会議体のデータを一元管理し、意思決定プロセスを最適化する
切り分けの基準を決めても、運用が分断されていれば効果は限定的です。会議体ごとに資料の置き場所も記録の残し方も違えば、どこで何が決まったのかを追う作業に手間がかかり続けます。
最後に、複数の会議体を横断して管理することの意味を確認しましょう。
会議体ごとにツールが分かれている状態の問題
多くの会社では、取締役会は専用の運用、経営会議は社内の共有フォルダとメール、といった形で管理が分かれています。この分断が、日々の確認コストを生んでいます。
ある議案が最初にどこで検討され、どの会議体で決定されたのかを確認したいとき、複数の場所を探しに行かなければなりません。担当者が交代していれば、そもそもどこを見ればよいかが分からないという事態にもなります。
任意の会議体には議事録の法定義務がないため、記録の粒度も会社によってまちまちです。だからこそ、意識的に同じ基盤へ載せる価値があります。
議案の履歴が横断でたどれることの価値
議案の流れを一本の線として追えるようになると、運営の見え方が変わります。いつ経営会議で検討され、どの論点が残り、取締役会でどう決議されたのか。この経緯がつながって残っていれば、後から経緯を説明する場面で困りません。
会議体をまたいだ履歴は、二重審議を減らす材料にもなります。同種の議案が過去にどう扱われたかを参照できれば、今回はどちらにかけるべきかという判断が早くなるからです。
意思決定プロセスの最適化とは、会議の数を減らすことだけを指すのではありません。どこで何を決めるかを明確にし、その記録を追える状態にすることも含まれます。
「michibiku」で複数の会議体を同じ基盤に載せる
取締役会DXプラットフォーム「michibiku」は、招集通知の作成と資料の配信、当日のペーパーレス運営、議事録の作成と保管までを一つのシステムで完結させます。取締役会だけでなく、経営会議や各種委員会といった会議体も同じ基盤で運用できる設計です。
会議体ごとに参加者やアクセス権限を分けながら、議案のデータは横断して管理できます。どの会議体で何が検討され、どこで決定されたのかが同じ場所に蓄積されるため、経緯をたどる手間がなくなります。
上場企業を中心とした導入実績があり、複数の会議体を抱える企業での運用にも対応してきました。会議体の切り分けを規程で整えたうえで、その運用をシステムで支える。この組み合わせが、意思決定プロセスの最適化を現実のものにします。
まとめ:法定機関と任意機関の線引きが、二重審議を解消する
取締役会は会社法が定める法定機関であり、役員会や経営会議は法律に定義のない任意の会議体です。両者は、決定が会社法上の効力を持つかどうか、法定の決議事項を持つかどうか、そして誰が参加するかという3つの軸で明確に異なります。議事録の作成と10年間の備置きが義務づけられているのも取締役会だけです。
二重審議が起きる原因は3つあります。それぞれの役割が規程に落ちていないこと、どちらで決めたのかが曖昧なまま案件が進むこと、そして参加者が重なったまま同じ論点を二度扱っていることです。解消の基準は3つあります。法定の決議事項は取締役会でしか決められないこと、委任先は取締役や執行役という個人であって会議体ではないこと、そして任意の会議体は取締役会に上げる前の検討の場と位置づけることです。
そのうえで運用を支えるのが、会議体を横断したデータの管理です。「michibiku」は取締役会に加えて経営会議や各種委員会も同じ基盤で運用でき、議案がどこで検討されどこで決定されたのかを一本の線としてたどれます。
会議体の役割が重複している、同じ議案を二度審議していると感じている取締役会事務局のご担当者様は、ぜひ一度資料請求やお問い合わせをご検討ください。




